様々なものを今までよりも手軽に作れる「3Dプリンター」。
市場規模も年々増加しており、今後も需要は高まっていくと予想されています。
家庭用のものも販売されており、ますます身近なものになっているのです。
そこで今回は、そんな3Dプリンターの基本的な情報を解説し、3Dプリンターをより身近に感じてもらえればと思います。
3DCADや3DCGで製作したデータを基に、立体モデルを作り上げる機器のことをいいます。
1980年に名古屋の技術士児玉氏によって、現在の3Dプリンターの元となる光造形の付加製造が開発されました。
その後、2007年と2009年に3D SystemsとStratasysが取得した二つの特許が切れたことで3Dプリンターの製作コストが低くなり、だんだん普及していったようです。
3Dプリンターは、設計データを読み込んで材料を一層一層積み上げていき、立体物を創り出す方法が一般的です。
3DCADや3DCGで本体データを作る必要はありますが、それができれば勝手に立体プリントしてくれるというのは画期的です。
尚、3Dプリンターの材料は特に決まりがなく、ABS樹脂とPLA樹脂が最も一般的で、その他にはナイロン樹脂・プラスチック・石膏・光硬化性樹脂・ワックス・金属など様々なものが使えます。
3Dプリンターを使うメリット・デメリットを理解していきましょう。
自分が作りたいと思ったアイデアを3Dデータで作り、それをすぐに立体物として印刷することができます。
今まではアイデアとデータはあってもそれを現実世界に落とし込むことはできませんでした。
しかし、3Dプリンターがあれば実際に作って使用することもできるため、業務用としてだけでなく家庭のちょっとしたものも自分で作りだすことができ、DIYにも活用できます。
今までは、新しい製品を作る前に金型で試作品を作る必要がありました。
外注する必要があるためどんなものであるかを外注先に説明し、できたものの修正をお願いしたりとかなり時間がかかってしまいます。
しかし、3Dプリンターがあれば自社ですぐに試作品を作ることができ、制作期間を大幅に短縮することができます。
印刷する前のデータ部分で変更や追加を促すことができるため、試作品の作り直しをする頻度も抑えることができます。
試作品の外注をする必要がなくなるためその分製作コストが下がり、データ内で修正ができることで試作品の作り直しをする必要が減り、さらにコストが下がります。
試作品を簡単に作れることで、試作品と他部品との組立に不具合はないかなど事前検査も行えるため、品質向上に繋がります。
別のパーツだったものをくっつけて製造することで強度をあげるなどの工夫も簡単にできるので、耐久性も高めることができます。
製造後の品質トラブルを無くせるのは大きいです。
今まで行っていた切削加工では、小さなものは細かいところまで表現することができませんでした。
しかし、3Dプリンターはデータの時点で細かい部分も複雑な形も表現できるため、そのような複雑な形でも再現することができます。
試作品を作る前に3Dデータで360℃製品を確認できるため、認識を一致することができイメージも沸きやすいため話し合いがスムーズに進みます。
データの時点である程度イメージができているため、実際に試作品を作ってからの話し合いもスムーズになるでしょう。
3Dプリンターで製品を作るには、3DCADや3DCGで設計データを造る技術が必要です。
2Dよりもはるかに難しい内容で操作方法など覚えることも多いので、技術を一から学ぶか、技術者を雇う必要があるでしょう。
3Dプリンターで1つのものを印刷するのに数時間はかかります。
大きいものになると尚更時間がかかるため、大量生産には向いていないのです。
3Dプリンターではいくつもの層を重ねてものを作るため、層と層の間が弱く強い力を加えると壊れてしまいます。
そのため、重要な部品などにはまだまだ使用できません。
強度をクリアできれば、いろんな業界で利用されるようになりもっと普及していくことでしょう。
3Dプリンターでは、実際にどんなものが作られているのでしょうか。見ていきましょう。
3Dプリンターの用途として一番イメージするのはやはりフィギュアですよね。
3Dプリンターが登場したことで、フィギュア作りの製造も今までより楽になり、低価格でよくできたフィギュアを手に入れられる世の中になりました。
マニアの方にはたまりませんね。
歯ブラシスタンド・スマホスタンドなど、一般の方でも少しの知識があれば作れてしまいます。
自分好みのものが見当たらない!というかたは、自分で好きにデザインして作れてしまいます。
歯科治療では、その人の歯の構造を把握したり治療計画を立てるために歯の模型を作ります。
しかし、この模型を作るのにはかなり費用と時間がかかるようで、患者は模型台で結構な料金を請求されます。
3Dプリンターでもっと手軽に模型が作れるようになれば、患者の医療費負担も少なくなるのではないでしょうか。
3Dプリンターで造られた車は2019年には存在しており、販売もされています。
わずか3日で製造されたにも関わらず他の車と変わりなく走り、見た目もコンパクトでスマートです。
かなり強度の高い部品で作られているそうで、強度も安心です。
コロナウイルスの影響で医療用品の需要が爆発的に伸びましたが、そこでも3Dプリンターは活躍しました。
フェイスシールドや防具用品が3Dプリンターで造られ、医療現場で使われたそうです。
その他にも人工呼吸器の部品も生産されたそうです。
実は、3Dプリンターで造られた家もいくつかあります。
2022年3月に作られたドーム状の住宅が話題になっており、300万円で販売予定とのことです。
1日未満で製作されたのは「スフィア」というプロトタイプで、まずはグランピング用として利用されるそうです。
住宅ローンは長期にわたって返済しなければいけないものなので、持ち家の購入をしぶる人も多く、スフィアのように安い値段で購入できるなら購入したいという問い合わせが多いそうです。
3Dプリンター住宅が増えていけば、住宅ローンにかかるはずだったお金を趣味や好きなことに使えてより生活が豊かになることでしょう。
3Dプリンターでの造形は、層を積み重ねて作るというやり方はどの種類でも変わりません。
しかし、その積み重ね方にはいくつか種類があるので、ここで紹介していこうと思います。
3Dプリンターの造形方式の中で一番歴史が古いものです。
液体状の樹脂に紫外線を当てて固め、それの層を重ねて造形を行う方式です。
光造形方式では、その繋ぎ目が目立たないためなめらかな表面を再現することができます。
また、透明性の高い素材を使えば、中が透けて見えるものを作ることもできます。
しかし、光造形方式は紫外線で固まる性質があるため太陽光に弱いです。
太陽光に長時間当て続けると変形・破損の恐れがあるので注意しましょう。
材料を高温で溶かし、それをノズルから出力しながら層を積み重ねて造形を行う方式です。
本体・材料ともに低価格で手に入れることができコンパクトサイズのものが多いというメリットがあります。
また、ABS樹脂などの材料を使えるため加工がしやすく色味もカラフルなものを素材として使うことができます。
しかし、光造形方式と比べて層の繋ぎ目が目立ちやすいため不自然になりやすいというデメリットがあります。
粉末状の材料にレーザー光線をあてて焼結させてから造形を行う方式です。
光造形方式と比べて強度が高く、複雑な形も再現することができます。
材料も、樹脂系だけでなく金属系も使用できるなど材料の選択肢が幅広いのも特徴です。
ただし、装置がかなり大きく場所をとること、粉末から作るため表面がザラザラしてしまいなめらかな表面は表現できないなどのデメリットもあります。
材料を噴射してそこに光を当て、層を積み上げていく造形方式です。
層の繋ぎ目が目立たないなめらかな表面を再現することができ、カラー印刷もできるためフルカラーの造形も可能です。
複数の材料を使って造形できる機種もあり、3Dプリンターの可能性を膨らませてくれる方式なのです。
ただし、強度は熱溶解積層方式よりも低く、太陽光での劣化もデメリットとなります。
3Dプリンターを使うには、
最低限これらの用意が必要です。
簡単に3Dプリンター仕様の流れを説明すると、
このようになります。
整合性の検証では、STL形式でデータを出力すると物理的に整合性のとれていないデータが生成される恐れがあり、それだと正しい造形を行うことができません。
裏面がなかったり厚みがなかったりしたら印刷し直しなってしまうので、印刷する前にデータの整合性を確認することでデータの抜け漏れをなくし正しい状態で印刷するために必要な作業なのです。
3Dプリンターは、様々な業界で活用されています。
主な業界での活用事例を紹介していきます。
上記でも紹介したように、3Dプリンターで造った家が話題になっています。
海外でも3Dプリンターで造った家で実際に生活している人もいるようです。
その他には、建築物の部材も3Dプリンターで造られているそうです。
建設業の3Dプリンター活用については、以下の記事で解説しているのでご覧ください。
医療業界でも3Dプリンターは活躍しています。
臓器や骨の3Dモデルを造形することで、手術前の打ち合わせや手術の説明をよりスムーズに行うことができます。
研修医が経験を積むために採決・動脈の触診ができるものを医学教育用のシミュレーターと言いますが、その試作品を3Dプリンターで造ることで、作成期間を短縮することができます。
また、人工心臓の試作品作成の役割としても3Dプリンターが使われています。
3Dプリンターには、「3Dフードプリンター」といってペースト状の食材をノズルから抽出して食べ物を造形できるものもあります。
主に、介護食・人口肉・昆虫食・洋和菓子などで活躍するとされています。
介護食では実用化が進んでおり、3Dフードプリンターを使えば固さや栄養素などの調整がしやすいので調理の負担が減ると言われているようです。
アパレル業界では、3Dプリンターで洋服を作ったり靴のソールや装飾品でも使われています。
3Dプリンターで造ればパターンを作成する必要がなくなるため、製作時間とコストを抑えることができます。
アパレル業界では今後もっと3Dプリンターが活躍していくことでしょう。
なんと、学校でも3Dプリンターが取り入れられているようです。
3Dプリンターの授業がある学校もあり、自分のアイデアを好きに考えて造形することで、モノづくりをする楽しさを学んでもらうようです。
3Dプリンターや3DCADを使えるようになることで将来の道も広がり、優秀な技術者を生み出すきっかけにもなります。
3Dプリンターは昔は何百万もするものでしたが、特許が切れたり技術が進歩して事で低価格で手に入れられるようになりました。
そのため、安いものもあれば高いものもあるというのが現状です。
家庭用であれば、3万円~8万円が相場といったところでしょうか。
高い方が使い勝手が良いものも増えていくので、予算を考えて購入しましょう。
業務用であれば、30万円~300万円が相場となります。
価格に幅があるのは家庭用も業務用も変わらないので、予算を決めることが大事になります。
3Dプリンターは、今後ますます活躍の幅が広がっていくと思います。
会社に導入しようとしている場合は、まずお試しで低価格のものを導入してみていろんな側面で使えそうなら高い物を導入するという流れでもいいと思います。
3Dプリンターを導入することで作業効率があがったり企業の評価が上がることにも繋がると思うので、ぜひ導入を検討してみてください。