ビジネスモデルは時代の変化に比例するように変わっていくものですが、現在は「フライホイール」というビジネスモデルに移行していっています。
従来のファネルモデルと比較しながら、フライホイールについて勉強していきましょう。
フライホイールは日本語訳で「はずみ車」という意味で、本来は回転運動の働きを利用してムラを打ち消すための車の部品のことです。
回転エネルギーを蓄えるため、シンプルでありながらエネルギー効率に優れたものなのです。
マーケティングにおいては、顧客満足度の高まりによるエネルギーがビジネスを成長させるというHubSpot社が採用したビジネスモデルです。
フライホイールでは、「回転速度」「摩擦の大きさ」「サイズ」という3つの要素が重要になります。
回転速度を上げるためにより爆発力のある領域に力を入れていきます。
回転速度を上げていくためには、摩擦となる要素を取り除く必要があるため、人手・非効率なプロセス・部署間のコミュニケーションなど、課題となる点をなくしていきます。
回転速度を上げて摩擦をなくしていけば、自然と顧客がついてきてくれるようになります。
ファネルとは、従来のビジネスモデルです。
潜在的な顧客に対して、5つのフェーズで徐々に顧客になってもらうビジネスモデルです。
まずはたくさんの人に認知してもらい、そこから興味をもってくれた一部と関係を築いていくというものですが、上から下への一方通行になっているという懸念点があります。
ファネルモデルでは、リピーターなど下のフェーズにいる人から上のフェーズにいる人への働きかけがないので、ビジネスチャンスを逃してしまう恐れがあるのです。
一方、フライホイールでは「顧客体験は循環する」という考え方になっています。
下のフェーズにいる人が知人など上のフェーズにいる人に商品・サービスを勧めたり、SNSで拡散したりしてくれることを念頭に置いたビジネスモデルなのです。
今の時代は、簡単に第三者に自分がいいと思ったものを勧められるソーシャルサービスが充実しているため、フライホイールの方が現代にあっているのです。
ただし、フライホイールの方が今の時代に合っているといってもファネルモデルがなくなるわけではありません。
ファネルモデルはフライホイールよりも細かく顧客獲得のフェーズが用意されているので、顧客管理の点ではファネルモデルが活用しやすいです。
フライホイールの考え方を前提に顧客中心のマーケティング施策を打ちながら、顧客の管理はファネルモデルで行っていくことで、より細やかな顧客サポートができると思います。
臨機応変に使い分けていきましょう。
フライホイールでは、顧客を中心において「惹きつける(Attract)」「信頼関係を築く(Engage)」「満足させる(Delight)」といった行動を行い、顧客満足度を上げていくといった顧客中心のビジネスモデルです。
3つのフェーズについてそれぞれ解説していきます。
まずは顧客を集める必要があります。
顧客の課題を見つけてそれを解決できる製品・サービスを提供します。
自社の製品・サービスでどのようなことができるのか、宣伝してより多くの人に知ってもらうための施策を打ちます。
具体的には以下のようなマーケティング手法を活用するといいでしょう。
興味を持ってくれた顧客に商品・サービスを購入してもらい、信頼関係を築いてリピーターになってもらうためのフェーズです。
リピーターが増えることで商品・サービスを拡散してもらいやすくなり、更なる顧客獲得に繋がります。
マーケティング施策としては以下のものが活用できます。
このフェーズでは、顧客の目標達成を支援します。
商品・サービスを使う上で不満となる点をなくすために、顧客フォローに力を入れます。
そうすることで顧客満足度も高まり、リピーターに繋がりやすくなります。
フライホイールモデルが注目されている理由はm現代は顧客本人が一番効果の高い発信者となりうるからです。
従来のファネルモデルでは、企業からの発信が一番信頼性があるという前提で情報提供が行われていました。
しかし、SNSの普及により一個人が気軽に情報発信をできるようになったことにより、情報発信源が企業だけではなくなったのです。
実際、メリットしか言わない企業のプロモーションより一般消費者の評価の方が信じやすいですよね。
知名度の獲得経路がSNSや口コミに移行したことにより、顧客満足度を中心に考えるフライホイールモデルが注目されるようになったのです。
ファネルモデルではフェーズが一方通行でしたが、フライホイールは循環型のモデルなのでどのフェーズでも顧客発信で新規顧客を獲得しやすくなっています。
リピーターも大切ですが、新規顧客が増えないとファンが増えていかないので、どのフェーズでも新規顧客が獲得できるのは大きなメリットです。
顧客中心のビジネスモデルなので顧客満足度の高い商品・サービスを提供できるのはもちろん、SNSやメールマーケティングなどを通じて顧客との繋がりを作りやすいのがフライホイールです。
顧客との信頼関係が築ければ、リピーターになってくれる顧客も増えていきます。
リピーターが増えれば安定した収入を得ることができるので、売り上げの向上に繋がります。
顧客を中心に考え顧客のニーズに答える商品・サービスを提供していれば、競合他社に差をつけることができます。
顧客のニーズを満たすことはもちろん、競合が実施していないマーケティングの穴を見つけることができれば、大きく差をつけることができるでしょう。
そのために、どのフェーズでも力を抜かずに徹底的なデータ分析とマーケティング施策が必要になります。
「Attract」「Engage」「Delight」の3フェーズでどのような施策が必要かを入念に調査・分析することができれば、ターゲット層や顧客ニーズにマッチしたマーケティング施策を打つことができます。
ターゲット層にマッチしたマーケティング施策を打つことができれば、低コストで大きな成果を上げることができます。
自社の商品・サービスとターゲット層をしっかり把握して、効率のいいマーケティングを行いましょう。
フライホイールモデルを導入するための流れをお伝えしたいと思います。
ぜひ参考にしてください。
まずは、フライホイールモデルを導入して何を達成したいかを決めましょう。
進む先が決まればそれまでにやることも明確になります。
目標を達成するためには、適切なKPIを設定することも重要です。
Attract・Engage・Delightの各段階でKPIを設定しましょう。
Attractでは新規顧客獲得の段階なので、アクセス数、SNSでのいいね数、表示数などをKPIとして設定するといいでしょう。
Engageでは、顧客とのコミュニケーションなど接点を作る段階です。
リード数や見積もり依頼数、サポート問い合わせ数などをKPIに設定しましょう。
Delightでは、顧客に満足してもらってリピーターや紹介に繋げる段階です。
顧客満足度、リピート率、紹介率などをKPIに設定しましょう。
目標とKPIが設定できたら、次は現状の把握です。
目標達成のために、現状何がクリアできていて何が足りないかを把握し、問題点を見つけましょう。
現状把握をすることで、フライホイールは自社商品に適しているかも確認できるので必須の作業です。
フライホイールでは特に顧客満足度が重要なので、顧客満足度に関する問題点はしっかり把握する必要があります。
競合調査やSNSなどの口コミを確認して、その領域全体や自社製品の問題点を認知していきましょう。
現状の問題点を把握したら、改善策を考えます。
まだ商品・サービスの認知度が低い場合はAttractのフェーズで認知度を増やすマーケティング施策に力を入れてください。
認知度と比較して問い合わせ数が少ないのであれば、商品の魅力が伝わり切っていない可能性があるので、商品の魅力をPRする、既存顧客の意見を取り入れて改善をしていくなど、商品自体の改善をしていきましょう。
リピーター率が低いのだとしたら、これも既存顧客の意見を取り入れて商品の改善をしたり、顧客とのコミュニケーションを積極的に行ったり、サポート体制を充実させたりという施策を行ってみましょう。
データを収集して分析することで、より顧客のニーズに合った商品・サービスを提供していくことができます。
これにより、顧客満足度も高まって売上アップにも繋がっていくのです。
また、データ分析をして課題が明確になることで、適切な場面で正しいマーケティング施策を打つことができます。
失敗がなくなればコスト削減にも繋がりますし、生産性もアップします。
フライホイールでは、PDCAを回していくことが重要です。
一度成功しただけで満足するのではなく、何度も実行してそのたび問題点を見つけ、マーケティング施策や商品・サービスの改善をしていきましょう。
そうすることで、常に変化する市場やニーズに対応しながら常にいいものを提供することができます。
では、フライホイールを実際に活用した事例を2つ紹介したいと思います。
Amazonの創業者ジェフ・ベゾスが考えたビジネスモデルがフライホイールの原型だと言われています。
Amazonのビジネスモデルでは、
このサイクルを回していくことで、Amazonの成長は加速し続けるという考えなのです。
Amazonは利益ではなくキャッシュフローを最大化することを大切にしており、様々な設備投資を行って新規事業を拡げていっています。
顧客満足度を一番に考えることで、世界中に愛されるサービスを作ることができるのです。
ドロップボックスでは、新規顧客獲得のため無料サービスを提供し登録のハードルを下げました。
また、初めて登録したユーザーに無料のスペースを提供することで付加価値をつけ、登録社数を増やしたそうです。
既存顧客がドロップボックスを知人と共有することを促すことで、そこから登録者に繋がるケースも多いようです。
フライホイールを活用することで顧客のニーズを把握して登録しやすい環境を作り、既存顧客からの流入も増やした事例です。
今回は、フライホイールという新しいビジネスモデルについて説明しました。
活用メリットも大きいですし、今の時代にピッタリのモデルになっています。
競合他社との差別化を図るためにも、ぜひすぐにフライホイールを採用しましょう!