2027年に新リース会計基準が適用になります。
リース契約を行っている方は、会計方法の違いなどを確認しておく必要があります。
どのような変更が行われるのか、新基準についてわかりやすく解説していきます。
リース会計基準とは、ファイナンスリースやオペレーティングリースなどのリース取引の種類や会計処理について定めた基準です。
1993年にリース会計基準が公表されましたが、その方法はリース取引をファイナンスリースとオペレーティングリースに区分し、それぞれ「売買取引(オンバランス)」と「賃貸借取引(オフバランス)」で計上すると定めるものでした。
しかし、この取引手法は国際的な手法と異なっていたため、国際的な基準に近づける見直しとして2007年から改正が行われました。
ファイナンスリースとは、途中解約ができないリースで、借手がリース物件のおおむね全額をリース料として払う取引です。
オペレーティングリースとは、リース物件のリース満了時の価値をあらかじめ見積もり、その価値を差し引いたリース料を支払う取引です。
リース会計基準が適用となるのは次のような会社です。
中小企業の多くはリース会計基準が適用されないため、「中小企業の会計に関する指針」に準じてリース取引の会計処理を行うことになります。
リース会計基準は、国際的な基準に合わせるために改正が行われました。
しかし、2016年に再びIFRS(国際会計基準)が改正され、オペレーティングリースを含む全ての借手のリース契約を原則オンバランスとするIFRS16号が公表されました。
国際基準が変更されたため、2019年、日本でもすべてをオンバランスとする会計基準の開発に着手する旨がASBJ(企業会計基準委員)によって発表されました。
その後、2023年にIFRS16号とほとんど同じ内容でリースに関する会計基準の策案が公表され、2024年9月13日に最終基準書が公表されました。
これが、2027年4月以降に適用される「新リース会計基準」です。
では、現リース会計基準と新リース会計基準の変更点はなんなのでしょうか。
変更前に確認しておきましょう。
現リース会計基準は、ファイナンスリースとオペレーティングリースに区分されています。
しかし、新リース会計基準では、IFRSの「ものを使用する権利は平等に考える」という概念が適用されるため、取引区分がなくなります。
また、全てのリースはオンバランスに統一されるので、借手側はリース取引をオンバランスで処理する必要があります。
新リース会計基準では、オンバランス処理に統一されるため、現在リース料支払いのみの計上で済んでいるオペレーティングリースにおいても、ファイナンスリース同様減価償却と支払利息が計上されます。
これにより、今までは「販売費および一般管理費」など定額の費用として計上されていたものが、「販売費および一般管理費の減価償却」と「営業外費用の支払利息」に変わるため、企業によっては貸借対照表の大幅な変更が必要になります。
新リース会計基準の適用企業は、次の通りです。
未上場企業(中小企業)は、強制適用ではないので従来通りの会計処理を継続できます。
ただし、任意で新リース会計基準を適用することもできます。
新リース会計基準では、どのような流れで会計処理を行えばいいのでしょうか。
ある程度の流れが決まっているので、確認していきましょう。
契約時に、契約内容がリースを含むかどうかを判別します。
(1)資産が特定されているか
(2)試用期間全体を通じて、資産の使用権利がユーザーに移転しているか
リースを含む契約について、リースを構成する部分としない部分を区分します。
「リース」と「サービス」の金額を、独立価格の比率で配分します。
リース期間は、解約不能期間に「延長・解約オプション期間」を加えたものを定めます。
なお、解約不能期間=リース契約で定めるリース期間となり、原則として再リースは考慮しないのでご注意ください。
リース開始日に、リース料総額の現在価値を計算して使用権資産・リース負債を計上し、利息相当額は各期に配分し、使用権資産の減価償却を計上します。
リース期間が12カ月以内の「短期リース」、リース料総額が300万円以下、または新品購入時に5000米ドルに満たない「少額リース」の場合は、定額費用の処理(オフバランス)ができます。
そのため、1年契約である再リースは短期リースに該当します。
再リースの部分のみはオフバランスができるので覚えておきましょう。
2027年4月1日以降から開始する、連結会計年度・事業年度の期首から適用されます。
まだ時間はありますが、貸借対照表の大幅変更やリース契約に当てはまるものの増加が見込まれるため、早めに対応準備をしていきましょう。
新リース会計基準に対応できるように、事前にできることはなんでしょうか。
確認していきましょう。
新しい基準へ混乱なく対応するためには、まず社内への周知が重要です。
社内の人がリース計上の変更について理解していれば、契約時も注意して行動できるので、必要な書類の保管や事前処理を行えます。
また、経理・財務担当者には新リース会計基準による処理に慣れてもらうために、適切なトレーニングを行うといいでしょう。
そうすることで、新リース会計基準が適用されても、トラブルなく適切に処理できます。
新リース会計基準に対応したERPシステムや会計システムの導入を検討しましょう。
既存のシステムがある場合は、新基準に対応予定か確認し、適用時期が遅かったり適用予定がなかったりする場合は、システムの乗り換えを検討しましょう。
対応システムを導入すると、資産と負債の自動仕分け機能、減価償却の自動計上機能などがついていたりするので、経理部門の負担を軽減できます。
新リース会計基準の適用には、まだ時間があります。
できる限りの準備を済ませて、新リース会計基準にトラブルなく対応しましょう。