静かな退職(Quiet Quitting)とは?おすすめできない理由、企業はどう向き合うべきか

近年、働き方も多様化してきており時間に縛られない自由な働き方をしている方も増えています。

そんな中、静かな退職(Quiet Quitting)というものが注目を集めています。

 

単語だけ見るとあまりポジティブな言葉ではなさそうですが、実際はどうなのでしょうか。

今回は、静かな退職についていろいろ解説していきたいと思います。

 

静かな退職(Quiet Quitting)とは

静かな退職とは、仕事に全力投球するのを止めて必要最低限の業務をこなす働き方のことで、職場には行くけど仕事を退職しているのと同じような状態のことを言います。

 

仕事に力を入れ過ぎないことで、時間に追われないストレスフリーな生活を送ることができるようです。

 

静かな退職によくみられるやり方としては、

  • 毎日定時退社
  • 自分の仕事でないことはやらない
  • 簡単な仕事だけ引き受ける
  • 責任を伴う仕事は断る
  • 業務時間外にメールやチャットに対応しない

このように、仕事に打ち込まず最低限のことだけこなすという特徴があります。

 

このような働き方、は合理的で仕事よりも私生活に重点を置いている人にとっては肯定的なものですが、会社としては意欲をもって働いてもらいたいため静かな退職を問題視する意見も多いです。

 

静かな退職が注目されている理由

静かな退職は、最初アメリカでトレンドになったのがきっかけです。

コロナウイルス感染拡大による社会不安やインフレによる経済活動の不安定さによる大量退職があったこと、それに加えてテレワークなどの働き方の多様化が背景にあります。

 

これらの理由から、多くの若者(特にZ世代)が「仕事中心の生活をするより、必要最低限をこなして生活面を充実させる方がいいのではないか」という考えに行き着いたようです。

アメリカ発祥の静かな退職という考えは、働き方が自由に選べるようになったことにより、日本でも若者の間で注目を集めているのです。

 

日本でも就職に対する考え方が変わってきている

以前は、「大企業に入って終身雇用で一つの会社で働き続ける」という考え方が普通でしたが、経済が混沌として大企業であっても安定が保証されない世の中になったことで、従来の考え方が崩れました。

それから、コロナウイルス感染症によりテレワークを実施する会社が増えたことで私生活に割く時間が確保されるようになり、「私生活に重きを置いた働き方をしたい」と考える人が増えているのです。

 

コーポレートブランディング支援を行う株式会社揚羽が、2022年12月~2023年1月末に就活生にとった「企業を選ぶ際に重視する項目は?」というアンケートによると、3位に「仕事と生活のバランスが優れているかどうか」がランクインしたそうです。

 

このように、今の若者は大企業かどうかよりも”ワークバランスがしっかりとれる会社かどうか”を判断材料にいれており、仕事一筋で生きていくのではなく、私生活を充実させながら仕事を行いたいという考えが浸透してきているのです。

 

従来の仕事に対する考え方とはかなり変化してきているため、「静かな退職」に共感する若者が多いことも頷けます。

 

日本では「働かないおじさん(おばさん)」になる傾向

日本の場合、静かな退職を選ぶ傾向にあるのは20代の若い世代ではなく、40代50代が多いことが三菱総合研究所の調査で分かりました。

 

役職がなく周りに相談相手がいないことで孤立し、自分の業績は平均以下と考えている人が静かな退職を選ぶ傾向にあり、仕事を楽しいと感じたり、スキルアップをしようという気持ちもないという特徴があります。

このように、仕事への意欲は低いわりに退職する気がない層が静かな退職を選んでいるようです。

 

静かな退職のメリット

静かな退職をするメリットは従業員側にしかありません。

従業員としてはどのようなメリットがあって静かな退職を行うのでしょうか。

 

精神的にゆとりがもてる

静かな退職は仕事を最低限しか行わないため、仕事で忙殺されることがなくなり精神的に追い詰められることがなくなります。

必要最低限の仕事だけこなして定時になったら帰るため、心にゆとりができて睡眠時間もしっかり確保することができます。

 

私生活を充実させられる

仕事を必要以上にしないため、残業や休日出勤もやりません。

これにより、私生活に多くの時間を割くことができます。

仕事よりも私生活に重きを置くことができるため、ストレスフリーで楽な生活を送ることができます。

 

プレッシャーなく働ける

静かな退職では、出世の意欲がなく昇格に興味がありません。

昇格しなければ給料も上がりませんが、その分責任も必要ないのでプレッシャーを感じず緩く働くことができます。

給料アップよりも楽に働くことを選ぶ人にとってはメリットだと思います。

 

 

このように、静かな退職では責任やストレスを感じずに楽に働くことができるというのがメリットとして挙げられます。

 

企業としては、働く意欲がない従業員というのは社内の士気を下げる存在であり、社内の雰囲気も悪くなるので問題視される存在となります。

日本人は同調圧力に弱い国民性があるので、社内で浮くことを何も感じない人は少ないため、静かな退職が実際に流行することはまだ考えにくいのではないかと思います。

 

静かな退職をすることのデメリット

ブラック企業で忙殺される毎日を送る人が増えるよりも、私生活を充実させられる人が増えた方がいいと思いますが、静かな退職を選ぶのはおすすめできません。

静かな退職をおすすめできない理由・デメリットを、当事者側と会社側で書いていこうと思います。

 

【当事者側のデメリット】

その会社に長くいられなくなる

静かな退職を始めるのは簡単ですが、長く続けることは難しいです。

というのも、意欲のない働き方をしていたら、同期に抜かれたり周囲から見下されたりする存在になっていきます。

若者の中で静かな退職を実際にやっている人は少ないため、会社で浮いた存在となり居心地が悪くなって逆に精神的ストレスが溜まっていくことでしょう。

 

また、会社がリストラを実施することになったら、会社に貢献していない分真っ先にリストラ対象となります。

このように、静かな退職をすることは自分の首を絞める行為なのです。

 

経済的に安定できない

豊かな生活を送るにはお金が必要ですよね。

ある程度のお金を持っていることで心にも余裕が生まれて結果的に生活を充実させることができます。

しかし、静かな退職を選択してしまうと、今以上の昇給は望めないどころか、降格する可能性もでてきます。

 

若い世代の場合は結婚や子育てをする資金が足りなくなってしまい、人生の選択肢が少なくなるというリスクがあるのです。

お金を稼がないと私生活で贅沢することもできないですし、将来的に後悔することになるでしょう。

 

時間がもったいない

静かな退職を選択すると、必要最低限な仕事をこなしたら後は定時まで時間を潰すという働き方になります。

自分で仕事を探すでもなく定時までひたすら時間を潰すというのは時間がもったいないと思いませんか?

 

その時間でできることを探したり、興味がある仕事をやってみたりすることで新たなスキルが身に付きますし、時間を有効活用できます。

毎日の時間を仕事するふりをするだけで終えるなんて時間の無駄遣いです。

 

【企業側のデメリット】

特定の従業員に仕事が集中する

企業内で静かな退職が増えてしまうと、急なトラブルなどに対応する人材が減り、特定の従業員にばかり負担がいってしまうリスクがあります。

そうなることで、普通に働いてくれていた従業員も離職してしまう確率が上がります。

 

イノベーションが生まれなくなる

仕事に対してやる気がない人が一人でも会社にいると、会社内の輪を乱してしまいます。

モチベーションを下げる人物が社内にいることで、組織内のイノベーションが生まれにくくなってしまいます。

意欲的に働くことをあきらめている人物が社内にいたら、いい刺激を受けることが難しくなるのは当然です。

 

社内環境が悪化する

仕事のモチベーションが低い従業員が一人でもいると、周りの従業員のモチベーションも一緒に下がってしまいます。

自分は一生懸命仕事しているのに、毎日暇そうにして定時にすぐ帰る人がいたらやる気も削がれますよね。

社内環境が悪いといい人材の離職にも繋がるので、できるだけ早く対処する必要があります。

 

 

もし仕事内容や環境に不満があるのなら、静かな退職を選ぶのではなく転職をして興味のある業界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。

 

好きなことなら人はいくらでも時間を費やせるものなので、仕事をすることが好きになる可能性もあります。

何かを始めるのに遅いことなんてないので、気になる仕事があるなら趣味程度から始めてみるのはいかがでしょうか。

 

新しく増えている「騒がしい退職」とは!?

静かな退職の次は、「騒がしい退職(loud Quitting)」という言葉が流行しているそうです。

 

こちらは静かな退職とは異なり、劇的に仕事を辞めることを言います。

普通に働いていたはずなのに、急に仕事を辞めることを同僚や上司に伝え辞めていってしまいます。

場合によっては退職代行や弁護士を使って、話し合いを必要としない方法を取ります。

このように突発的に辞めてしまうのは、会社や周りに対して不満を抱えていたからと考えられます。

ずっと抱いていた違和感やストレスがある日我慢できなくなり、その激情のまま退職してしまうのです。

 

ギャラップの分析によると、約5人に1人が騒がしい退職をしているそうです。

騒がしい退職は他の従業員にも不安を植え付け、「この会社は何かあるんじゃないか」と不信感が育ってしまいやすいです。

 

組織内に不安を充満させないためにも、しっかりコミュニケーションをとって誰がどんな不満を抱いているのか把握し、急な退職を選択しないように従業員の気持ちを知っていく必要があります。

 

企業はどう向き合えばいいのか

静かな退職や騒がしい退職を選ぶ従業員をなくすために、企業にはどのようなことができるでしょうか。

企業が実施できることを紹介していきます。

 

適正を見極める

本人の興味や適性に合ってない仕事を与えてしまうと、不満に繋がって静かな退職に進む従業員が出てしまいます。

配属部署や与える仕事を決める時はその人の適正をしっかり把握し、向いている仕事を与えるようにしましょう。

 

面談を実施する

定期的に面談をすることで、従業員それぞれが何に不満や不安を持っているのかが把握できます。

今の仕事に対して思っていることを聞くことで、その人がもっと活躍できる部署に異動させたりモチベーションを上げる仕事を与えたりすることができます。

 

そうすれば楽しく働くことができるので、静かな退職を選ぶ人もいなくなるでしょう。

面談をする際は、従業員側が安心して話せるように1対1で、周りに話が聞こえない空間で行ってください。

また、従業員側がメインで話せるように面談する側は聞く姿勢に徹しましょう。

 

成果に見合った評価をする

成果に見合った評価をすることで、仕事に対するやる気もアップしますし、会社への信頼度も上がります。

 

見合った評価をもらえないから必要以上の仕事はしないという考えに向かっていく人もいると思うので、それを防ぐためにも正当な評価を行いましょう。

成果に見合った評価をするのは会社として当然のことだと思うので、もし正当な評価がもらえていないという不満が従業員側にあるのならすぐにでも改善すべきです。

 

「やりたい」を叶えてあげる

従業員の提案や挑戦したいことを頭から否定するのではなく、背中を押してサポートしてくれるような環境を作りましょう。

 

もちろん実現不可能なことはあると思いますが、否定ではなくアドバイスを与えて実現可能な方向にもっていくことはできます。

自分の意見が通ってそれを後押ししてくれる環境があれば、仕事へのモチベーションも一気にアップすることでしょう。

 

自分の意見が通って自分中心に仕事を進めていけるとなったら、ほとんどの人はやる気になってくれると思います。

 

 

静かな退職を選ぶ若者を社内で出さないためにも、企業側でできることをやっていく必要があります。

上記の提案をぜひ参考にしてください。

 

精神的に疲れているなら静かな退職を選ぶのもあり

静かな退職は選ばない方がいいとお話ししましたが、もし精神的に疲労が溜まっているようなら静かな退職を選ぶのは問題ないと思います。

もちろん、忙殺されて体的についていけなくなった場合も静かな退職をした方がいいです。

 

静かな退職は、ただ私生活を充実させる目的ではなく、今まで仕事を頑張ってきた人が一時の休息を得るために使うべき働き方です。

もちろん、職場に行くのも難しいほど追い詰められてしまった場合は、絶対に無理はせず休職をして早めに病院へ行ってくださいね。

 

まとめ

今回は最近注目されている静かな退職について解説しました。

やはり将来のことを考えると、会社での居心地が悪くなり真っ先にリストラの対象となる静かな退職を選ぶのはリスクが大きいです。

 

特に若いうちはなんでもできるので、仕事に不満があるなら転職して興味ある仕事を選んだ方が時間を有効活用できると思います。

なので、なるべく静かな退職を選ばないようにしましょう。

やる気をもって取り組める仕事を見つけて、人生を充実させましょう!

 

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offisuke6