企業の広告宣伝方法は、IT技術が発展するにつれて幅広くなっています。
今回紹介するリテールメディアは、小売業者における広告配信手法のひとつであり、IT技術の発展により追加された広告方法なのです。
リテールメディアとはどんなものなのか、この記事で紹介していこうと思います。
リテールメディアとは、小売業者が集めた独自の商品販売データや顧客データを基に広告を配信する手法のことです。
ECサイトや実店舗にあるデジタルサイネージなどで表示される小売店が媒体として提供している広告のことで、購入データや顧客データなどの独自データを基に顧客の趣向に合わせた広告やクーポンを配信します。
店舗やECサイト内に広告枠を提供することで、広告主から配信料を得ることができるという仕組みになっています。
イギリスのWARCが2022年末に発表したレポートによると、リテールメディアの市場規模は広告媒体の中で4位に位置しており、2023年における世界全体の支出は約15兆8500億円と前年よりも10.1%も伸びると推測されているそうです。
また、ネット広告などの事業を展開するCALTA HOLDINGSの調査では、2022年のリテールメディアの広告市場は135億であり、2026年には805億円と2022年の6倍に拡大すると予測を立てているそうです。
リテールメディアが注目されるようになった理由はいくつかあります。
AIやデジタル技術の発達により、データ収集や分析が以前より容易になりました。
データ収集ツールやデータ分析をしてくれる機械学習技術のおかげで、マーケティングに対するハードルが下がり、専門的な知識がなくてもECサイトや広告配信を行えるようになっているのです。
デジタルサイネージやECサイトでの広告配信はこれらの技術発展により利用者が増えてきているのです。
コロナウイルスの拡大により、実際に店舗に足を運ぶ人が減ってECサイトで商品を購入する人が激増しました。
そのためECサイトに参入する小売店が増え、web上での顧客獲得や商品PRのためにECサイト内での広告やクーポン配信が増加したのです。
Cookieとは、webサイトに訪れたユーザーの情報を一時的に保存しておく仕組みのことです。
一度目の訪問でユーザー情報を保管するため、時間を空けて再度訪問した際に同一ユーザーかどうかを判別することができるのです。
訪問したwebサイトから発行されるcookieは「ファーストパーティーcookie」と言い、訪問したwebサイトではないドメインから発行されるcookieを「サードパーティーcookie」と言います。
訪問サイトに表示された広告から発行されるのがサードパーティーcookieであり、リターゲティング広告に必要な情報です。
このcookieが廃止されることでターゲティング広告が今までのようにできなくなってしまいます。
無策で広告を配信しても今までのような効果を発揮できないため、実店舗やECサイトでのファーストパーティーcookieによる確実な効果を狙う企業が増え、リテールメディアに期待を抱く企業が増えているのです。
上記のように、リテールメディアに可能性を感じている企業が多いため、多くの顧客データや購買データを蓄積している小売店との協力を検討する企業が増えています。
近年、多くの小売店が店舗だけでなくECサイトでも顧客との接点を増やしているため、そのような小売店と協力することで新しいマーケティングを実施していくことができます。
小売店が持つ顧客データや購買データを利用することで、適切な顧客体験を提供できます。
リテールメディアは、どこか一方向だけが得をするのではなく、関わった人全てにメリットがあります。
どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
今まで蓄積した顧客データを活用して販促を拡大できます。
ECサイトから購入できたりクーポンを受け取れるようにしたりすることで、購入率はもちろん店舗に来るきっかけを作ることもできます。
また、デジタルサイネージやECサイトでの広告枠を提供することで、広告収入を得ることができます。
加えて、広告主との接点ができることで商品PRの幅を広げることができます。
小売店が保有している実店舗とECサイトの顧客や商品情報を有効活用できます。
顧客の購買データや行動データ、来店データなどを見ることで、適切なタイミングで適切な顧客にクーポン配信や商品PR広告を表示させることができるのです。
また、小売店での広告表示は、実店舗でもECサイトでも顧客に対するリーセンシー効果が強いです。
リーセンシー効果とは、購買行動の直前に接触した広告が顧客に与える影響のことで、これが高いほど顧客が広告を見ることで購買に繋がりやすくなるのです。
たしかに、コンビニなどで大きく宣伝されている商品は興味が湧きますよね。
購買意識が高い人が集まる場所で広告を提示できるため、むやみにネット上に広告をばらまくよりも購買可能性が高いのです。
自分の購買行動や趣向にあった広告やクーポンを取得できるので、興味関心のある商品情報を適切なタイミングで得ることができます。
興味のある情報のみを得ることができることで無駄がなく、顧客満足度が高まります。
日本では、どんなリテールメディアが企業で活用されているのでしょう。
ぜひ参考にしてください。
大手コンビニエンスストアのファミリーマートでは、レジの真上にデジタルサイネージが設置されています。
こちらのデジタルサイネージで新商品や注目商品のPR映像を流し、消費者の購買意欲を高めています。
レジは必ず最後に訪れず場所なので、列に並んでいる間の暇つぶしにもなりますし、デジタルサイネージで移った商品に興味をもって購入に至る可能性も高まります。
100店舗で行った実証実験では、デジタルサイネージ視聴率は70%におよび、デジタルサイネージ無しの時と比べて1.6倍の購入意向につながったそうです。
「Matsukiyo Ads」という共同販促モデルにより、広告を効果的に配信しています。
メーカー製品の広告をGoogle広告で配信し、マツキヨが管理することでポイントアプリとの連携ができ、広告に触れた人が店頭に訪れ商品の購入につながったかどうかなどの検証ができるそうです。
データと広告の良さをしっかり利用して顧客増加につなげている素晴らしい事例です。
店内の待合室に設置されたデジタルサイネージにて広告配信ができます。
予約番号や呼び出し番号が同時に表示されるため、自然と画面に目を向けることで広告に興味を持ってもらうことができます。
1カ月の想定再生回数は約1600回見込めるので、繰り返して流すことで認知度をあげることができます。
このように、デジタルサイネージを視聴してもらいやすい場所に設置することで広告配信のメリットを引き上げています。
リテールメディアは注目度が高くメリットばかりが目につきますが、課題も存在します。
課題もしっかり把握しましょう。
リテールメディアをうまく活用するには、店舗での顧客体験を高めて顧客との関係性を深め、その上で広告を配信していく必要があります。
そのためにはシステムなどに投資する必要があるため、かなりのコストがかかります。
店舗数が多い企業になればなるほど投資に必要な金額も大きくなるため、導入のハードルが高くなるのです。
リテールメディアでは、メーカー(広告主)と小売店との目的のすり合わせが難しいです。
小売店が売りたいものや改善したいと思っていることがメーカー(広告主)と一致するとは限らないため、そこをすり合わせてお互いが納得できる形に持っていかないと、リテールメディアを有効活用できません。
双方が見ている指標で一致する部分がないと、効果を上げていくことはできないでしょう。
リテールメディアは今後も進化を続けて私たちの日常に当たり前にあるものになることでしょう。
しかし、まだ発展途上であるため手探りでありながらも小売店とメーカー(広告主)が協力して広告効果を高めていく必要があります。
お互いの情報をフル活用して、リテールメディアの可能性をもっと高めていくことが大切です。
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今後は小売店でリテールメディアに触れるのが当たり前の世の中になるでしょう。