最近、街中で無人店舗を見かける機会が増えていませんか。
無人店舗は、人手不足が深刻な現代において、販売員がいなくても物品販売ができる画期的な店舗です。
これから無人店舗を始めようとしている人向けに、メリットや成功ポイント、成功事例などを紹介したいと思います。
無人店舗とは、店員を置かずに無人の状態で運営する形態の小売業のことを言います。
無人店舗の市場規模は、2023年時点で12000億円、約2.5兆円規模まで広がる見込みのようです。
人手不足の解消手段として注目され、コロナ禍をきっかけに規模が拡大したようです。
海外では、すでにレストランやスーパーでの無人店舗化が進んでいるため、日本でも無人化を目指す会社が増えています。
無人店舗は、大きく分けて「セルフレジ型」「ウォークスルー型」「自動販売機型」の3つです。
それぞれ見ていきましょう。
お客さんが自分で商品をスキャンして支払いを行う方式です。
現金からキャッシュレスまで、幅広い支払方法が設定できます。
近年は、主にコンビニやスーパーで導入されています。
手に取った商品を自動で決済される方式です。
事前登録をして入店時に個人認証を行うため、退店時はレジを通さずにそのまま物を購入できます。
退店時に自動決済されるため、お客さんは会計に時間を取られずにストレスなく買い物ができます。
自動販売機も無人店舗の一つです。
飲み物以外にも食べ物や日用品などを入れることもできます。
お金を入れて商品を選ぶことで、欲しい商品を購入できます。
お金を入れないと購入できないので、無人店舗の中でも防犯機能が高い方式になります。
無人店舗の運営は、業種によって向き不向きがあります。
無人店舗化に向いている業種は以下のものです。
スタッフが常駐せずとも運営できる業態のものは、基本的に無人店舗化が可能です。
無人店舗化を考えている場合は、まず自分の業態が向いているかどうかを確認してください。
無人店舗のメリットはどんなところにあるのでしょうか。
確認していきましょう。
どの業態でも人手不足が課題としてあげられますが、小売店は特に人手不足が深刻です。
無人店舗は人がいなくても運営できるため、人手に左右されずに安定的な店舗運営ができます。
少子化によって今後も人手不足の課題はなくならないと思うので、無人店舗化を成功させればどんどん店舗を増やしていけるでしょう。
レジや接客に人手を割かなくて済むので、マーケティングや店舗運営などのコア業務に人を配置することができます。
人材配置の最適化や作業効率アップを実現できるため、企業全体の運営力を底上げできます。
有人レジのみの店舗は、時期や時間帯によってレジが大混雑する場合があります。
そうなると、レジ待ちの時間が発生するためお客さんのストレスにつながります。
レジが混雑しすぎて見込み顧客を逃したり、クレームが発生したりする可能性もあります。
自動レジの導入や無人店舗化は、そういったレジの混雑を解消し、顧客満足度の向上につながります。
コンビニは有人で24時間営業を実現していますが、人手不足により24時間営業を廃止している店舗も増えてきているようです。
しかし、無人店舗化を実現できれば、幅広い業種で24時間営業を実現できます。
人材がいらないので企業側の負担はほとんどありませんし、来客も好きな時間にフラッと入店できるので、お互いにストレスが少ないです。
実際、冷凍食品の無人店舗は24時間営業のところが多いです。
無人店舗は、AIや監視カメラ、センサーなどを活用して運営されます。
監視カメラで来店客の年代がわかりますし、店舗内での動きや決済方法もデータとして残ります。
これにより、
などのマーケティングデータを収集できます。
このデータを基に、当初設定したターゲット層に当てはまっているか、商品の導線は適切か、買ってほしい商品はどこに置けば良いか、商品の金額は適正か、決済方法の種類は少なくないか、などの分析を行い、店舗改善につなげられます。
データを効率よく収集できるので、無人店舗を複数運営することもそれほど難しくないでしょう。
このように、無人店舗はメリットが多いです。
人手不足に課題がある場合は、一度無人店舗化も検討してみてください。
分かっているかと思いますが、無人店舗はメリットだけではありません。
デメリットもしっかり把握していきましょう。
人件費はかかりませんが、その分防犯カメラやセンサー、キャッシュレス決済システムなど各種機器の導入が必要になります。
これらの機器を最初に購入する必要があるので、有人店舗よりも初期費用が高くなります。
無人店舗をするためには、ある程度の資金を集めておかなければなりません。
しかし、人件費というランニングコストがかからないので、長期的に見ればそこまでの出費にはならないでしょう。
人の目があると、犯罪をしてはいけないという意識が働くようですが、無人店舗では人がいないため、万引きされやすくなります。
最近でも、日本の無人販売店舗で万引きがありました。
有人店舗よりも万引きリスクが高まるため、防犯カメラや防犯センサーの設置は必ず行いましょう。
例えば、コンビニでは飲食物の販売以外に宅配便の受付や公共両機の支払いなども行っています。
しかし、無人販売ではこうした人の手が必要な業務はできません。
今後ロボットの活用が一般的になれば無人でも複数の業務ができるようになるかもしれませんが、今の段階では、人の手が必須です。
複数の業務を行う場合は、店舗内に最低一人は従業員を常駐させる必要があります。
無人店舗ではキャッシュレス決済がメインであり、訪問客が自分で操作して支払う場面も出てきます。
そうなると、操作が分からない人もいるため、支払いがうまくできずに無意識に万引きをしてしまったり、決済段階で諦めて購入機会の損失が生まれたりする場合があります。
実際、セルフレジで高齢の方が従業員に操作方法を聞いている場面をよく見かけます。
全年代にアプローチできるように、操作方法がシンプルで誰にでも利用しやすい環境にする必要があります。
無人店舗を成功させるためには、どのような施策が必要なのでしょうか。
現在無人店舗を運営している方も、これから導入を考えている方も、ぜひ参考にしていってください。
まず、無人店舗を導入する目的とターゲット層を明確にしましょう。
この二つを明確にすることで、やるべき施策を絞ることができるので、効率的に運営できます。
目的については、なぜ無人店舗を開業したいのかを考えましょう。
「ファンを効率よく増やしたい」「来店客数を増やすきっかけにしたい」など、業種や提供サービスによって目的は異なります。
そこを明確にしてターゲット層の年代や性別などを絞っていくことで、ターゲット層に合った無人店舗の運営を実現できます。
例えば、10~20代の女性向けのデザートを扱っているお店で、「ファンを増やしたい」「店舗に来店するきっかけにしたい」という目的があれば、外装・内装ともにターゲット層の好みに合った色合いやデザインにすることで、ターゲット層にアプローチできます。
また、提供しているデザートのすべてを無人店舗に置くのではなく、人気商品を厳選して配置し、それを気に入った顧客が店舗に足を運んでくれるように店舗の様子を店内で紹介したり、店舗に行けばもっと多くの商品があることを紹介しておくことで、自然と店舗に足を運ぶ顧客が増えるでしょう。
このように、目的とターゲット層に向けた施策に絞ることができるので、意味のある運営ができます。
無人店舗では、商品選定が成功の鍵を握ります。
などに当てはまる商品を陳列しましょう。
これに当てはまるとなると、やはり飲食物は成功率が高いです。
冷凍餃子の無人店舗はいろいろなところでよく見かけるので、無人店舗に向いている商品の一つです
あとは、パン、お菓子、調味料、マスクなどの日用品、カレーなどの加工食品、冷凍食品などです。
上記でも触れましたが、無人店舗は万引きリスクが高いです。
そのため、盗難防止のためのセキュリティ対策を万全にしないと、利益が生まれなくなってしまいます。
防犯カメラの設置はもちろん、万引き防止のセンサーを入り口に設置する、不正行為の検知システムなど、万引き対策を徹底しましょう。
無人店舗を設置した後、そのまま放置していては利益を増やしていけません。
収集したデータを活用し、ターゲット層に合わせて店舗環境を変えたり、価格設定を変えたり、導線を工夫したりして定期的に施策を行っていきましょう。
ターゲット層がよく来る場所を調査して、場所を絞って店舗を構えましょう。
ターゲット層がいない場所に店舗を構えても意味がありません。
駅前などの人が集まりやすい場所に構える方が、より多くの人に認知してもらえます。
無人店舗は全国で広がっているので、日本と海外の成功事例を見ていきましょう。
成功事例を参考にすることで、これから店舗を設置する場合にヒントを得ることができると思います。
画像出典元:ファミリーマートニュース
株式会社ファミリーマートは、株式会社TOUCH TO GOが開発した無人決済システムを導入し、医誠会国際総合病院北棟に無人店舗の「ファミリーマート Touch To Go i-Mall店」を、2023年10月にオープンしました。
ファミリーマートは、2021年から無人店舗をオフィスや駅構内、市役所などに展開しており、今回で30店舗目となります。
人手不足の現状でも、無人店舗であれば人員の有無に関係なく店舗を増やしていけます。
店舗の仕組みとしては、天井に設置されたカメラなどの情報から、入店客と手に取った商品をリアルタイムで認識しているため、出口付近に設置された決済端末ディスプレイに、購入商品と購入額が自動で表示されます。
バーコードをスキャンする必要はなく、手に取った商品をそのままバッグに入れても大丈夫です。
決済方法は、バーコード決済やクレジットカードなどのキャッシュレス決済だけでなく、現金でもお支払いいただけます。
出口で支払い方法を選択するだけなので、年代に関係なくスムーズに買い物ができます。
画像出典元:NTTデータホームページ
株式会社ダイエーと株式会社NTTデータは、レジを通さずに商品を購入できるウォークスルー型無人店舗をイオンフードスタイル横浜西口店内にオープンしました。
2021年にCASH&GOの店舗をNTTデータ社内にオープンし、そこから店舗数を増やしています。
今回、スーパーマーケットに併設されるウォークスルー型無人店舗は日本初であり、約400種類の商品を取り扱う無人店舗として注目されています。
スーパーマーケットは大規模なところでも、レジの混雑は避けられないので、ウォークスルー型を取り入れることでレジ待ちの時間がなくなり、来客にとってより快適な購買体験を実現できます。
来店客は、専用アプリをインストールしたスマートフォンを入店ゲートにかざして入店します。
その後、欲しい商品を持って退店するだけで、自動でキャッシュレス決済が完了するという仕組みです。
出典元:@DIME
サンフランシスコにあるサラダボウル専門店「eatsa」は、世界初の無人ファーストフード店です。
中に入ると、コインロッカーのような設備とモニターがずらっと並んでいるだけで、従業員は一人もいません。
メニューは、サラダボウルとサイドメニューのチップス、ドリンクのみです。
オーダーはモニターから行い、好きな商品を選んで注文します。
決済はクレジットカードのみで、レシートはメールに送られます。
支払いが完了すると、ロッカー番号が表示されるので、その前で料理ができあがるのを待ちます。
調理中はロッカーの扉に映像が流れ、待ち時間も楽しめるように工夫されています。
3分ほどで出来上がるので、「忙しくてご飯を食べに行く時間がない。でも体にいいものを食べたい。」というニーズに応えてくれる素晴らしい業態です。
Eatsaは、サンフランシスコ以外にもワシントンやニューヨークなどで店舗展開をして人気を博していましたが、今はそれらを閉店して、サンフランシスコの店舗のみに絞っています。
この理由は、店舗展開するのではなく、無人レストランの技術を他社に販売することにシフトしたからだと考えられます。
実際、2017年にアジアンフードチェーンの「Wow Bao」に技術を販売しています。
無人レストランが増えていくことで、店舗側も来客側も無駄のない飲食体験を実現できます。
このように、無人店舗が与えるメリットはかなり大きく、人手不足解消や作業効率化、時間短縮などに貢献します。
セキュリティ問題など、まだまだ課題も多いですが、IT技術が進化することで無人店舗の課題も解決していくことでしょう。
将来性がある形態なので、今のうちから検討するのがおすすめです。