去年の4月から始まった働き方改革。皆さんは「働き方が変わった」と感じているでしょうか。
実際どのような制度を導入すればいいか悩んでいる経営者さんもいることでしょう。
では、働き方改革の基本の説明から現在の改革の動き、成功事例などを合わせてみていきたいと思います。
働き方改革とは、「一億総活躍社会(少子高齢化社会の進行を阻み、50年後も人口1億人を維持し、家庭や職場
で誰もが活躍できる社会)」を実現するため、企業の労働環境を改善する取り組みを指します。
そのため労働者の目線に立ち、労働制度の改革、場合によっては企業文化なども変えようという試みでもあります。
なぜ、働き方改革が唱えられるようになったのでしょうか。
それには、今社会で起きている問題が大きく絡んでいます。それは、「少子高齢化社会の進行」「働く人々の働き方に対するニーズの多様化」の2つです。
日本で高齢化社会が進んでいるのは周知の事実ですが、これは働き手の減少に繋がり、経済の縮小に直結します。
それを防ぐため、貴重な働き手の就業機会を増やしたり、働く意欲を向上させる必要があります。
また、働き方のニーズに関しては、介護や育児、その他ライフスタイルの変化により働く時間や場所を制限されてしまいます。
そのような働き手の離職を減らし、働く機会を増やす必要もあります。
このような社会的背景から、働き方改革が提言されるようになったのです。
一番の目的は、労働者の働く環境を整え「働きやすさ」を実現することです。
そうすることで、働き手の労働生産性が上がり結果的に経済にいい影響を与えるようにすることが政府の目指す結果です。
働き方改革を実現するための取り組みは7つあります。
ここで一つ一つご紹介していきます。参考にしてくださいね♪
これは、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)の不合理な待遇の差をなくすというものです。
この制度により、労働者はどのような雇用形態を選択しても同じ賃金を得ることが出来るようになります。
2020年4月、つまり今年の4月から「同一労働同一賃金」が全国一斉に施行されます。
こちらは、正社員と同じ仕事量や責任を負っているのにも関わらず、待遇が違っていた非正規雇用者の待遇や賃金を正社員と一緒にしようという取り組みです。
【メリット】
・非正社員の生産性向上
・能力のある労働者の雇用
【デメリット】
・人件費の増加
・非正社員の育成に対する負担
【メリット】
・正当に評価されるようになる=働きがいの創出
・能力次第でキャリアアップの可能性
【デメリット】
・能力のない従業員の給料引き下げのリスク
これからは、海外のように年齢や継続年数ではなく能力によって評価される社会に変化していく可能性が高いですね。
以前は働けば働くほど給料が上がる時代であり、長時間労働は当たり前でした。
しかし近年、長時間労働、違法時間外労働による自殺や過労死が増えており、問題視されるようになりました。
これにより、長時間労働やサービス残業を減らすべく、国が労働時間に規制を設けることにしたのです。
働き方改革により、法律で労働時間の上限が設けられました。
勤務時間は「1日8時間、週40時間」と定められており、残業時間は原則として月45時間、年360時間となっています。45時間を超えることが出来るのは年6か月までとなり、残業の場合これを超えて働かせた場合は罰金を支払わなければいけません。
また、休日に関して週1日または4週間に4日以上の休日を付与することも義務付けられています。
残業の上限規制は2019年4月から始まっていますが、適用に猶予が与えられたり除外されるケースもあります。
・中小企業…残業の上限規制は2020年4月1日から適用。
残業が月60時間超得た場合の割増賃金率引き上げの適用は2023年4月1日から適用。
・自動車運転の業務…改正法施行5年後に、上限規制を適用。
・建設事業…改正法施行5年後に、上限規制を適用。
・医師…改正法施行5年後に、上限規制を適用。
・鹿児島・沖縄の砂糖製造業…改正法施行5年後に、上限規制を適用。
・新技術・新商品等の研究開発業務…医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた上で、
時間外労働の上限規制は適用外。
尚、法定労働時間である「1日8時間、週40時間」を超えて残業をさせる場合には、36協定を結ばなければいけません。
また、国は長時間労働による自殺や過労死を無くすため、違法な長時間労働を行っている企業の指導や企業名公
表の強化、「労働条件相談ほっとライン」という相談窓口を設けるなど、法整備以外の対策も行っています。
以前は、「会社に行って働くこと」が普通であり、それ以外の働き方を提示する動きもありませんでした。
そのため、ライフスタイルの変化(子育てや介護など)や、体が不自由な人など会社に来るのが難しい人たちは職を得られないか離職するしかありませんでした。
しかし昨今、様々な働き方が出来る「テレワーク」に注目が集まってきています。
コロナウイルスの影響もあり、テレワーク制度を導入する企業が急激に増え、出社しなくても働ける体制が整ってきているようです。
テレワークに関しては、別記事で詳しく説明していますので、そちらをご覧ください。
テレワーク以外の働き方は、時短勤務・フレックスタイム制・副業兼業があります。
所定労働時間を原則として6時間にする制度。育児や介護がある従業員が、家庭と仕事を両立するために作られました。
対象の従業員は以下になります。
・3歳未満の子供がいる場合
・3歳~小学校未就学の子供がいる場合
・介護を必要とする家族がいる場合
・日雇い従業員でないこと
・1日の労働時間が6時間未満でないこと
一定の期間において予め働く時間の総量を決めた上で、従業員が日々の始業・終業時間を自分で決めることができる制度。
自分の予定や仕事の量に合わせて仕事をする時間を変えることが出来るため、自由度高く働くことが出来ます。
【導入のメリット】
・通勤ラッシュを避けることが出来る
・仕事と家庭を両立しやすい
・残業時間を減らすことが出来る
・優秀な人材を集めることが出来る
【導入のデメリット】
・仕事の連携がしにくいため、導入できる職種が限られる
・勤怠管理が難しい
・仕事の管理がちゃんとできない従業員もいる
どちらも、収入を得るために携わる本業以外の仕事(自ら事業を営むことも含む)。働き方改革の促進により、副業・兼業が促進されています。
【メリット】
・優秀な人材の定着(副業により転職を防ぐ)
・優秀な人材を確保できる
【デメリット】
・本業に集中できなくなる可能性
・機密情報漏洩の恐れ
・副業をメインにされてしまう(退職)の恐れ
【メリット】
・収入を維持しながら安心してチャレンジが出来る
・新たなスキル、人脈などを習得できる
・収入の増加
【デメリット】
・労働時間が長くなり、健康上支障をきたす
・副業・兼業の仕事によっては雇用保険等の適用がない場合もある
柔軟な働き方は、働き方改革によって増えてきています。このような制度がどの企業でも導入されることを願います。
ダイバーシティとは、「多様性」のことです。
この世には性別の違い、国籍の違い、価値観の違いなど、様々な違いを持った人が暮らしています。
そのような自分たちとの違いを受け入れ、多様な人材が力を発揮できる環境を整えよう!というものです。
ダイバーシティの推進には、いくつか種類があります。
➀女性の活躍推進
➁障碍者の活躍推進
➂高齢者の活躍推進
➃外国人の活躍推進
この4つに焦点を置き、多様な人材が活躍できる社会を作り上げることが必須です。
経済産業省は、社内のダイバーシティ化に取り組んでいる企業を表彰する「新・ダイバーシティ経営企業100選」という事業を展開し、平成30年度には大企業、中小企業含め計24社が受賞しています。
【メリット】
・多様な考えを持つ人材が集まることで、今までにない新しい製品、作業の効率化が生まれる
・企業の社会的評価が上がる
・優秀な人材を確保することが出来る
【デメリット】
・多様化する組織を受け入れられない人が出てきて差別が生まれるリスク
どんな人でも自信をもって活躍できる社会になることが一番望ましいです。
そうすることで、国も新しい方向へ進んでいけることでしょう。
厚生労働省は、年率3%程度を目途として最低賃金を引き上げていき、全国加重平均が1000円になることを目指しているそうです。
賃金を引き上げる代わりに労働時間が長くなってしまっては意味がないので、そうならないように生産性を向上します。
つまり、賃金引き下げと生産性向上はセットでなければいけないのです。
賃金引上げ・生産性向上を実現するため、厚生労働省は支援制度を設けています。
中小企業の業務改善を支援し、賃金引上げを図るために設けられた制度です。
生産性向上のための設備投資を行い、事業部内の最低賃金を一時的に引き上げた中小企業を対象に、設備等時にかかった経費の一部を助成するというものです。
賃金引き上げのための業務改善に関して、社会保険労務士が無料で相談支援を行います。
賃金規定の見直しや、助成金の紹介など幅広くお手伝いします。
3事業主以上で構成する中小企業の事業主団体において、労働時間短縮や賃金引き上げに向けた生産性向上のための取り組み必要となった費用を助成します。
この改革は、従業員の意欲を高め、さらなる生産性の向上をもたらす可能性を秘めています。さらに、賃金が他より高いことで応募者も増えるでしょう。
しかし、生産性が上がらなくなった時、人件費が会社の経営を圧迫してしまうというリスクも含んでいます。
こちらは、「転職・再就職者の採用機会拡大に向けた支援・環境設備の推進」「給付型奨学金の創設など誰にでもチャンスのある教育環境の設備」の2つを掲げています。
一つ目の主な施策は、転職者受け入れのための指針の策定、企業と大学の連携プログラムの支援、受け入れ企業の支援、成長企業で転職者や高齢者の採用拡大を行い、生産を向上させた企業への支援など、幅広い支援を行っています。
また、2つ目の人材育成の支援としては、社員の育成を支援する「キャリア形成促進助成金」や、非正規雇用者のための「キャリアアップ助成金」があります。
また、家庭の事情により進学できない子供を減らすため、給付奨学金の創設や、教育費負担の軽減など、教育環境の充実を図っていくようです。
ハラスメントは今や様々な種類があり、セクハラだけがハラスメントの対象ではなくなりました。
ハラスメントは、被害者の心を深く傷つけ、能力の発揮を妨げます。そうすることで会社の生産性が下がるだけではなく、社会的イメージも下がります。
ハラスメントを行っていいことなど一つもないのです。
企業は、ハラスメントの防止を始める前に、現状を把握する必要があります。
まず、経営者がハラスメントの危険性、問題についてよく理解してください。セミナーに通って勉強したり、ネットで調べてもいいでしょう。
ハラスメントの危険性を理解したら、次は社員の意識を確認しましょう。アンケートで聞いてもいいですし、人数が少ないなら一人ずつ面談するでもいいでしょう。
その際、アンケートの場合は匿名にするなどして、伝えたことは一切他言しないことを明言してください。
最後に、企業は絶対にセクハラを許さない、これからも防止するという姿勢を明確に示してください。
現状を把握できたら、防止するための方針を決めます。
方針を決めたら、従業員にハラスメントの防止について、なぜそれが必要なのか、ハラスメントによる影響、どのような行動・言動がハラスメントであるかなど、教育を行い意識させるようにします。
万が一に備えて、社内に相談窓口を作ったり、社内診察機関を設置して対応できるようにしましょう。
ハラスメントはどの企業に置いても起こりうる可能性があり、誰でも被害者・加害者になり得ることを理解して、早めに対処するようにしてください。
「働き方改革」を行い、成功した企業、導入を進めている企業をご紹介します。
様々な会社のやり方を見て、どういうやり方があるのか参考にしてくださいね。
【取り組み内容】
2017年9月16日から雇用形態を「正社員」に一本化し、「同一労働同一賃金」を実現。
雇用形態間の区別も撤廃され、昇格上限がなくなり福利厚生なども従来の総合職員水準で統一される。
また、キャリアパスに関しては、社員の「業務内容」や「役割」に基づいて整理した役割等級制度を導入している。
【取り組み内容】
在宅勤務の推奨、およびweb会議の導入
20時以降の残業を禁止し、代わりに朝方時間外労働を朝6時から可能にした。
【効果】
働き方改革実施前と比べて時間外労働が13%減少し、残業45時間以上の社員も34%減少した。
社員からは「仕事と家庭が両立できるようになった」「早く帰れるため健康的になった」などのプラスな意見が寄せられた。
【取り組み内容】
育児・介護休職制度の取り組み
育児休職は、子供が3歳になるまで取得可能。時短勤務は事務・技術職に関しては子供が8歳になるまで、技能職(守衛、用務員など)は子供が3歳になるまで利用可能。
配偶者の転勤などで退職した人を同一職種に再雇用する制度を設けて職場復帰を可能にした。
【効果】
2014年、127人だった育児休職制度利用者は2018年で178名に、時短勤務者は72名から132名に増加しました。
年々利用者が増え、社員間での理解が深まっていることを実感できます。
【取り組み内容】
「ダイバーシティ・マネジメントの推進」のため、女性活躍推進プログラムを実施したり、女性管理職を100名にすることを目標に掲げています。
また65歳まで安心して働ける雇用制度確立したり、障碍者、外国人雇用の推進を行っている。
【効果】
女性管理職の人数が2012年は13名であったのに対し、2019年には87名に増加しました。
2019年4月の時点で、外国人社員数は36名に上りました。
【取り組み内容】
来院者の受付、清算、施術に時間がかかっていた。
そのため、助成金を活用することでコンサルタントによる業務フローの見直しとPOSシステムを導入。
具体的には、来訪者情報をバーコード管理することで受付・清算にかかる時間を短縮。
施術に関してはベッド数の増加、有資格施術者の増員、施術時間配分の調整などを行った。
【効果】
施術可能人数が増加したことによりお客様を待たせることがなくなり、来院者数が増加した。
また、受付・清算にかかる時間が短縮されたため生産性が上がり、従業員1人当たりの時間給(事業場内最低賃金)を60円引き上げた。
【取り組み内容】
退職者の再雇用制度の導入、急な休みによる人手不足への対策として、2年ごとに業務をローテーションする取り組み、ワーキングホリデー研修、技術研修、英語研修の実施。
【効果】
ローテーションでは、社員が社内の仕事への理解を深めることが出来、さらに助け合うことで社員同士の距離が縮まり、仕事の効率化が加速した。
高い能力を持つ社員を再雇用することで生産性の向上にも繋がった。
【取り組み内容】
全女性社員を対象に、セクハラ防止研修を実施。
女性たちが過去に受けた被害や効果のあった対処法、個別の具体的ケースについての効果的な検証を行う。
この研修では、女性たちが意見交換をしている様子を後ろで管理職の男性が見ている。
その目的は、実際の体験や意見を男性社員が知ることで、問題意識を持ってもらうことが狙い。
【効果】
研修によって、女性は自分の考えに自信を持ち、今まで言えなかった意見を上司に伝えることが出来るようになった。
男性社員としては、女性の体験や意見を聞くことでどれだけの人がセクハラに合っていたのか初めて認識することができ、女性に対する職場環境を整える意識が変化した。
【取り組み内容】
長時間労働を無くすため、22時に一斉に事業所を閉鎖する「ロックアウト制度」を導入。
終業時間と同様に、朝7時以前の入社を原則禁止にしている。
2012年には「PCロックアウトシステム」を導入。
勤怠システム上での出退社登録を義務付け、もし従業員が残業申請をしないでPCを使い続けた場合、警告画面が表示され、最終的にはPCが強制シャットダウンされる仕組みになっている。
【効果】
2016年の1人当たりの平均残業時間が2014年と比べて10%減少した。
いかがだったでしょうか。
知っておくべき内容を中心に「働き方改革」について説明しました。
この7つの取り組みが、社員の仕事に対する意欲を増加させ、生産性に繋がるとなれば、やらない理由はありませんよね。
中には人の精神面、生死に関わることもあるので、後回しにせず、働き方改革がどんなものか知った今から行動を開始してください!
多くの人が快適で幸せな生活ができる社会になることを願います。
あなたも今日から、始めましょう!