IT技術が発達してとても便利になりましたが、一方で環境の変化が激しい世の中はストレス社会と呼ばれています。
そこで、注目すべきなのが“レジリエンス”です。
レジリエンスとは何か、企業でレジリエンスを鍛えるにはどうしたらいいかなど解説していきます。
心理学的な意味では、困難や逆境・脅威に直面した時、うまく適応していくプロセスのことを言います。
脆弱性との対義語で、「抵抗力」「耐久力」といった自発的治癒力の意味を持ちます。
もともとはストレスと同じように物理学の用語でした。
ストレスは「外力による歪み」を意味しますが、それに対しレジリエンスは、「外力による歪みを跳ね返す力」として使われ始めました。
レジリエンスと似た言葉で「ストレス耐性」や「ハーディネス」という言葉があります。
ストレス耐性は、ストレスに耐える強さの程度のことを言います。
ハーディネスは、ストレスに強い人の特性を表す言葉です。
レジリエンスは、困難な状況に出くわした際、一時的な対応不可能な状態になってもそこから回復する現象のことを言います。
低い状態から回復することを言うため、レジリエンスは適応指導に向いているのです。
レジリエンスが注目を集めているのは、やはりコロナウイルス感染症による世界的混乱が大きいでしょう。
コロナウイルスとうい大きな脅威により、世界全体が混乱に陥りました。
そんな中でも会社は稼働しなければいけないので、困難から立ち上がる力が必要になります。
コロナ禍の影響により、企業の中でのレジリエンスの重要性が高まったのだと思います。
レジリエンスが高いことで、どんなメリットが生じるのでしょうか。
個人と企業それぞれのメリットを見ていきましょう。
【個人の場合】
レジリエンスを高めると、物事を楽観視できるようになります。
そのため、失敗したり困難に陥っても「成長のために必要なこと」などとポジティブに捉え、落ち込まずに次に進んでいくことができます。
ストレスから自分を守ることができるので、鬱や適応障害などの心の病気も発症しにくくなります。
レジリエンスを高めると、自分を客観的に見れるようになり、過大評価・過小評価をしなくなります。
等身大の自分を知って受け入れることで、自己肯定感が高まり自分の経験やスキルに見合った働きをすることができます。
また、ストレスに強くなることで失敗も乗り越えられるようになり、それが自信に繋がって自己肯定感を上げることにも繋がります。
プラス思考になると、未来志向でチャレンジ精神も生まれます。
そのため、急な状況の変化にも臨機応変に対応できるようになり、すぐに順応できるようになります。
働き方の変化や市場の変化に対応できるようになることで、どの職業でも輝ける人材になるでしょう。
一つのことに感情を支配されてしまうと、他のことが手に付かず仕事に支障をきたしてしまいます。
レジリエンスを高めることで自分の感情をコントロールできるようになるため、感情的になってトラブルを起こしたり、一つの出来事に一喜一憂しなくなって気持ちが楽になります。
コントロールできないと疲れやすくストレスも溜まりやすいので、それがないと心が軽くなり、その人の心を守ることにも繋がります。
【企業の場合】
困難を跳ね返す力が育まれれば、ちょっとやそっとのことでは精神を病んだりしなくなります。
そのため、離職や休職をする人を減らすことができます。
従業員が急にいなくなることがなくなるため、企業の安定経営にも繋がります。
レジリエンスが高い人がたくさん育つことで、みんなが困難に陥っても立ち直って解決する行動をとるため、生産性の向上が期待できます。
日本人は自己肯定感が低い人が多く、その上真面目なので少しの失敗で心が折れてしまう可能性が高いです。
そんな日本人でもレジリエンスを高めれば、困難に立ち向かう強さを持つことが出来ます。
困難に立ち向かって解決できたことが自信に繋がり、仕事のモチベーションアップに繋がるでしょう。
再びコロナ禍のような緊急事態に陥った場合でも、従業員で協力し合って壁を乗り越えていくことができるでしょう。
脅威はいつ来るか分からないので、レジリエンスの高い従業員を増やしておけば、困難から会社や従業員を守ることができます。
また、市場が変化しやすい分野では、特にレジリエンスの高い人材が必要になります。
目の前の状況に一喜一憂せず、臨機応変に対応できる人材を育てることで、もしトラブルが起きても被害を最小限に抑えることができます。
レジリエンスの高い従業員を雇っている企業は、取引相手からの信頼度も高くなります。
トラブル時もしっかり対応してくれる安心感があるため、仕事を任せてもらいやすいのです。
また、求職側にとっても、レジリエンスの高い人材になる教育がしっかり行われている場合魅力的に映ります。
脅威や困難はどんな会社に就いても必ず発生するものなので、レジリエンスを高めてそれに備えられる力をみんな欲しているのです。
新入社員や若手社員はまだ分からない事がたくさんあり、慣れない環境でストレスが溜まりやすいです。
加えて、入った当初は相談もしにくいため、1人で抱え込んでしまうことも少なくありません。
レジリエンスを高めることで、環境の変化やストレスに耐えられるようになり、早期離職も少なくなります。
また、日本人は自己肯定感が低い人が多く、そのまま社会に出ると心を病んでしまう可能性が高いです。
今からでも、レジリエンスを鍛えて自己肯定感を上げる必要があるのです。
40代前後もレジリエンスを鍛える必要があります。
というのも、そのくらいの年齢になると役職に就いて責任が大きくなります。
また、中間管理職は下と上からの板挟みで、ストレスをためやすいです。
相手の意見を聞いて反映したり、自分で考えて指示を出す必要があるので、ストレスに強く臨機応変に対応できるようになるために、レジリエンスを高める必要があるのです。
真面目で頑張りすぎてしまう人ほどレジリエンスを鍛える必要があります。
真面目な人は緊張の糸がとあるきっかけで切れてしまうと、途端に鬱や適応障害になりやすいのです。
自己肯定感を高め、楽観視ができるようになることで、息抜きが出来るようになりストレスを上手く発散できるようになるでしょう。
下請けの仕事は、元請の都合に振り回されます。
急に予定が変更になったり、納期が早まったりと、ストレスが溜まりやすい仕事です。
レジリエンスを鍛えることで、ストレス耐性を身に付け通常よりイライラせずに働けるようになるでしょう。
競争が激しかったり状況が目まぐるしく変化する業界で働いている人も、ストレスを溜めやすくうまく発散しないと滅入ってしまうでしょう。
レジリエンスを鍛えてストレス耐性を上げ、適応力を高めることで仕事がやりやすくなるでしょう。
【個人の場合】
人間にはそれぞれ「思考の癖」というものがあります。
自分はどんな癖を持っているのか把握して意識的に回避することで、癖を治すことができるのです。
“認知療法”という心理療法に基づいた「考え方の癖」の分類でうつ病治療にも使われたそうです。
1 | 全か無か思考 | 物事を100か0かで考えてしまう |
2 | 一般化のしすぎ | 少しの出来事で「いつも(この先も)こうだ」と考えてしまう |
3 | 選択的抽出 | 自分が気になっていること(特に悪いこと)にばかり目が行ってしまう |
4 | マイナス思考 | なんでも悪い方に考える。「いいことがあった分悪いことが起こりそう」等 |
5 | レッテル貼り | 「自分はダメだ」「あいつは性格が悪い」など、少しの要素で自分や相手を判断してしまう |
6 | 心の読みすぎ | 相手の一挙一動ばかり気になり、些細なことから相手の心を深読みしてしまう。疑心暗鬼 |
7 | 拡大解釈と過小評価 | 自分の悪いところばかり大きく考えてしまい、良いところは見えてこない。自分以外の人間が偉大に見える |
8 | 感情的決めつけ | 自分の思考を過信しすぎてしまう。小さな出来事も重大に感じる |
9 | 「すべきである」思考 | 「~でなければならない」「~なべきだ」と基準を決めてしまい追い込んでしまう。完璧主義 |
10 | 自己関連付け | 身の回りの悪い出来事を自分のせいだと思い込んでしまう |
ABCDE理論は論理療法におけるカウンセリング理論で、思考のパターンを否定的なものから肯定的なものへ変える方法です。
このように分けられます。
Aの出来事を受け、Bで合理的思考(プラス思考)をするか非合理的な思考(マイナス思考)をするかでCの結果は変わってきます。
Bで合理的な思考を行った場合はいいですが、非合理的な思考を行った場合はCでやってはいけない行動をとってしまうかもしれません。
それを防ぐために、Dが重要になってきます。
DでBのマイナス思考に対して自問自答し、プラス思考に持っていくことで、Eでトラブルを生まない感情・行動を起こすことができます。
(例
嫌なことがあっても、立ち直るサイクルを作ってしまえば短時間でスッキリと立ち直ることができるようになります。
それを繰り返すことで感情のコントロールができるようになるでしょう。
何か嫌なことがあったら、今の自分の感情を紙に書き出してみましょう。
そして、何に対して負の感情をもっているのか、負の感情を無くすにはどうすればいいかを考えて書き出します。
この時、マイナスな行動ではなくプラスの行動で解決する方法を考えてくださいね。
(例:相手に嫌がらせをするなどのマイナス行動はNG。これからは事前確認をこまめに行うなど、自分にプラスになる行動をとる)
書き出すことで自分の感情が整理され、落ち着くことができます。
立ち直りを鍛えるには、過去の成功体験を書き出したり、小さな目標を立ててそれを達成するといいでしょう。
そうすることで立ち直りに必要な自己効力感を高めることができます。
自分の強みを理解することで、自己肯定感を高め未来志向にしてくれます。
自分が得意なことは何か、持っているスキルは何かを把握することで、自分の能力を生かしていくことができます。
自分の成長を感じられることで、より自信を持つことができます。
【組織の場合】
研修は、レジリエンスを鍛える方法として一番おすすめできます。
レジリエンスをよく理解している講師が鍛え方を伝授してくれるため、従業員にとっても有意義な学びを得られるでしょう。
など、コミュニケーションの多い職場を目指すことで、精神的に安定して働くことができます。
すぐに相談できるという安心感はストレスフリーな環境を生み、早期離職も減らすことができるでしょう。
どの立場の人もチャレンジできる環境を整えるのも大事です。
失敗を恐れて誰も挑戦しない職場では、新しいアイデアは生まれず若手の成長にも企業の成長にも繋がりません。
など、「失敗してもいいんだ、挑戦することが大事なんだ」と思わせてくれる環境であれば、誰しも前向きに行動できるようになり、企業にとってもいい効果があります。
万が一辛いことがあったり立ち直れない場合に備えて、匿名などで気軽に相談できる窓口を設置しておくと良いでしょう。
何かとストレスの多い世の中なので、いろいろなことが重なってレジリエンスを鍛えても立ち直れない場合もあります。
そういった場合に療法士に相談できるとすごく気が楽になるでしょう。
レジリエンスを知って鍛えるのは、今の日本人に必要なことです。
精神力が強くちょっとやそっとのストレスに負けない人材を増やしていくためにレジリエンスを組織で高めていきましょう!