日本は長時間労働と言われるように、4人に1人が働きすぎているのが現状です。
労働時間や待遇による問題はたくさんあり、休みなく働き続ける状況に陥ってしまうため過労死も問題になっています。
このような労働環境を変えるために、「勤務間インターバル制度」について学んで行きましょう。
勤務間インターバル制度とは、勤務終了後に一定時間以上の休息時間を設けることで、趣味や日々の生活、睡眠時間を確保するためのものです。
定められた時刻以降の残業を禁止し、一定の休息時間を設けることで従業員が十分に休める時間を設けるという方法もあります。
2018年に確率した「働き方改革関連法」に基づき「労働時間等設定改善法」が改訂されたことで、企業に対し勤務間インターバル制度の導入が努力義務化されています。
尚、勤務終了後に何時間ほど休息時間が必要かという点において、国は正確な数字を提示していません。
しかし、厚生労働省の有識者検討会で休息時間を「8~12時間」と例示しています。
いつもより残業が長引いた場合は、始業時間を後ろ倒しにして定めた休息時間を確保できるようにしましょう。
こうすることで、残業があっても従業員に一定の自由な時間を確保することができます。
例【次の始業時間までのインターバルを11時間と定めた場合】
残業を21時まで行ったら、その11時間後の8時までは働いてはいけない。
日本で問題になっている長時間労働や過労死から全ての従業員を守り、心身ともに健康でいられる生活を送ってもらうためです。
勤務終了から翌日の勤務時間までに十分な余裕がないと、次の日の準備で休息時間が無くなってしまいます。
そうすると自分の時間が持てずにストレスが溜まり、鬱病や自殺、過労死などに繋がってしまいます。
そのような労働による悪影響を防ぐため、勤務間インターバル制度が確立したのです。
また、外国人の労働者が増えたことにより、今までの長時間労働を軽減してこれから入ってくる外国人労働者にとって働きやすい環境を整えようという動きも関係しています。
勤務間インターバル制度を導入する前に、メリットとデメリットを確認しておきましょう。
世間では「勤務間インターバル制度は意味がないのでは?」という意見もあるようなので、メリットとデメリットを比較して導入する利益の方が大きいかどうかを見極めてみてください。
勤務終了から翌日の始業時間まで一定の休息時間を与えることで、従業員に健康な生活を送ってもらえます。
十分な休息をとることで体だけでなく心も休めることができ、過労やうつ病を防ぐことに繋がります。
長時間労働が常駐化している企業で勤務間インターバル制度を導入することで、今までの長時間労働を抑制し、従業員が自分の時間をとれるようになります。
それにより従業員満足度があがり、企業へ貢献したいという気持ちも増加するでしょう。
従業員だけでなく企業にもメリットが大きいのです。
従業員が健康的な生活を送れることで、仕事にも良い影響を与えてくれます。
十分な睡眠時間がとれることで頭がスッキリとした状態で働けるので、寝不足や長時間労働によるストレスの多い状態での労働よりも高いパフォーマンスを発揮することができます。
しっかり休息をとらないと頭が働かないため、長時間労働は逆に生産性を下げてしまいます。
勤務間インターバル制度の導入で全従業員が全回復した状態で働けば、生産性は何倍にも上昇します。
働く環境を改善することで、人材確保もしやすくなります。
勤務間インターバル制度を導入し、他社よりも働く環境が整っていることをアピールすることで、より高いスキルを持った人材に応募してもらうことにも繋がるのです。
勤務間インターバル制度は従業員がよりよい生活を送れるように作られた制度です。
そのため、残業が多い中でも一定の休息時間はとれるとなれば、従業員満足度も向上し離職率の低下に繋がります。
尚、長時間労働で休暇もろくに取れないと人が辞めてしまう確率が高いため、勤務間インターバル制度を導入しないとしても早めに改善する必要があります。
導入の際は、社長や役員、現場の人間に勤務間インターバル制度はどういうものか、どんなメリットがあるのかなどしっかり説明をしないと理解してもらえず導入までの工程が長引く可能性があります。
導入の際は企業・従業員にどんなメリットがあるのか、またかかるコストはどのくらいなのかなどしっかり把握した上で導入に向けて進むようにしましょう。
勤務間インターバル制度を導入すると、今まで長時間労働を行っていた場合、従業員の労働時間が短くなるところもあるでしょう。
仕事量は変わらないのに仕事時間が短くなるので、作業を効率化して短時間で業務をこなす必要があります。
業務効率化を図るために、業務改善ツールの導入が必要になる場合もあるでしょう
ツールの導入にはコストがかかるため、そのこともしっかり頭に入れておきましょう。
多くの企業は勤務間インターバル制度を導入することで、従業員の勤務時間が短くなったり残業時には始業時間を後ろ倒しにするなど、勤務体制が今までと変化します。
そのため、勤務体制の改善や大幅な変更が必要になってくるので、そこも理解しておきましょう。
介護や飲食、サービス業などの人手不足が顕著な業種では、一人一人の休息時間を延ばす余裕がないところも多いでしょう。
誰かが休んでいる間に仕事をしてくれる代わりの人材がいない場合、勤務間インターバル制度の導入は難しいといえます。
勤務間インターバル制度を導入して勤務時間を短くしても、その間に作業が終わらなければ持ち帰り残業になってしまったり、家に帰ってからも他社員に連絡を取る必要が出たりする場合はあります。
そのような事態に陥らないよう、繁忙期は制度の利用を縮小するなど時期によって使い分けるなど、打開策を打ち出していく必要があります。
このように、勤務間インターバル制度はメリットが盛りだくさんですが気を付けるべき点もあります。
デメリットを理解したうえで、導入を検討してくださいね!
2019年4月1日から努力義務化されています。
努力義務とは、努力義務とは「導入の努力をしなければいけない」というものなので、絶対にやらなければいけないわけではありません。
しかし、制度の導入があまり進まない場合や過労死、鬱病などが国内でもっと深刻化した場合、義務化する可能性も十分にあります。
今後の厚生労働省の発表を確認していきましょう。
勤務間インターバル制度の導入は努力義務であり、導入しなくても罰則はありません。
加えて、職種によっては繁忙期があり、勤務間インターバル制度が行えない時期もあるため、そのような場合を考慮して罰則を設けていないそうです。
勤務間インターバル制度を導入する際に利用できる「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」という助成金があります。
これを利用することで、ツールの導入など勤務体制の改善資金を補うことができます。
こちらの制度は応募が多く、締め切りが早まり去年の10月で終わってしまいました。
しかし交付内容が改正され、事業実施期間の満了日と支給申請書の提出期限が延長しています。
「応募したけどまだ実施していない」「支給申請書を提出していない!」という方は、早めに行動を開始しましょう!
勤務間インターバル制度に取り組む中小企業の方々を応援するための助成金
【対象事業主】
次の全てに該当する事業主
【支給対象の取り組み一覧】
以下の取り組みの1つ以上は実施してください。
【支給額】
取組の実施に利用した経費の一部を達成状況に応じて支給
対象経費の合計額に補助率3/4を乗じた額を助成します。
尚、常時使用する労働者数が30名以下かつ支給対象の取組で➅~➈を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助額は4/5となります。
加えて、以下の表の上限額を超える場合は上限額とします。
賃金の引き上げを成果目標に加えた場合の加算額は、指定した労働者の賃金引上げの合計に応じて、以下の表のとおり上記上限額に加算します。
なお、引き上げ人数は30人を上限とします。
【実施期間・支給申請書の期限について】
支給申請書提出期限:事業実施予定期間の最終日から換算して30日後の日または交付決定を受けた日の属する年度の3月7日のいずれか早い日まで
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150891.html
2022年時点で、勤務間インターバル制度の導入率は5.8%しかありません。
2021年の導入率は4.6%だったので、少し増加していますがまだまだ少ない状況です。
その結果を受け、厚生労働省は2025年までに勤務間インターバル制度の導入率を15%以上に引き上げるという目標を掲げています。
導入率が少ない一方で、導入した企業では労働時間の短縮や残業が少なくなったなどの効果が出ています。
勤務間インターバル制度の認知度も年々高まっており、2018年度には「制度を知らない」と答えた企業は26.6%でしたが、2020年度には10.7%まで減少しています。
しかし、2022年になって制度を知らない企業は17.1%と、2年前より増加してしまいました。
そんな中、勤務間インターバル制度を導入したことで職場環境や従業員満足度が上がっている企業の事例を紹介します。
24時間体制で稼働しているこの病院は、看護師650人を対象に11時間のインターバルを設けることをルール化しました。
働き方が変わることに対し、スタッフ側も最初は戸惑っていたようですが、インターバル制度が浸透するにつれ疲れが溜まりにくいなどのメリットが出てきて効果を得られたそうです。
11時間のインターバルを確保するために残業も減らしたことによって、一人あたり17.4時間あった残業時間が11.8時間と3割も減ったそうです。
また、インターバル制度のおかげで離職率も9%から6.7%に改善したそうです。
情報通信事業を営むこの会社では、繁忙期や納期が近づくと残業が長引いてしまう傾向にありました。
また、担当業務によって稼働に差があり、時間外労働の量もバラバラで把握できていなかったようです。
そこで、社員全員を対象に11時間のインターバルを設け始めました。
制度が守れないときも罰則は設けず、その時々で柔軟に変えているそうです。
インターバル制度の導入により、社員の睡眠時間が確保され健康面で大きな効果に繋がったそうです。
交替勤務制をとっているため、インターバル制度導入前は19時終業、翌朝6時始業という休息時間の短いシフトがありました。
残業時間はほとんどなかったようですが、勤務間インターバルは十分に取れていなかったそうです。
そこで、全職員対象で12時間のインターバルをとることにしました。
一番朝早いシフトでも19時終業の翌日8時30分始業になり、2時間30分もインターバルが長くなりました。
勤務間インターバル制度の導入により、今までは終業から始業までの時間は休む時間として使われていましたが、最近はジムに通って体を動かす人が増えたそうです。
勤務間インターバル制度は、まだそのメリットが広まっていないようですが、導入することでプラスの効果を発揮している企業がたくさんあります。
長時間労働が減るだけでなく離職率にも影響があるなどたくさんのメリットがあるので、ぜひこの機会に導入を考えてみてください♪
勤務間インターバル制度を導入する場合の導入手順はこちらになります。
まず、労働時間に関わることの現状把握をします。
労働時間に関わることとは、実労働時間・時間外労働時間・通勤時間などです。
現状把握からインターバルが十分に取れているのか、十分にとれていない場合はどんな理由で取れていないのかを確認しましょう。
次に、導入目的を明確化しましょう。
現状や課題を踏まえて導入目的を設定してください。
目的の例としては、「従業員に対し十分な生活時間の確保」「健康的に働いてもらうため」などです。
そして、経営層に積極的に関わってもらうため、勤務間インターバル制度の内容と導入意義をしっかり説明しましょう。
インターバル制度を実際に使う従業員にも内容を説明する必要があります。
事前準備が整ったら、次は制度の設計です。
上記のような項目を設計しましょう。
設計ができたら既定の設備にはいります。
就業規則を改定したり労働協約を結ぶことで勤務間インターバル制度を企業での「制度」として位置付けるのです。
上記の下準備を終わらせたら、いよいよ制度の導入です。
導入前に、勤務間インターバル制度について社内で説明をする必要があります。
新しい制度の導入を不安視している人はたくさんいるはずなので、その不安を取り除けるように説明しましょう。
インターバル制度の詳細・導入意義・注意点・導入による効果などを詳しく説明し、制度に前向きに取り組んでもらえるようにしましょう。
尚、導入時のみ周知すればいいわけではなく、継続的に制度について説明しておくことが重要です。
次に、顧客や取引先への周知も必要です。
インターバル制度を導入していても、顧客からの急な変更や作業依頼があれば作業しなければならず、インターバル時間を取るのが難しくなってしまいます。
そうならないためにも、制度の内容をしっかり説明し、ゆとりをもった依頼をしてもらえるようお願いしにいくのがいいでしょう。
メールだと真意が伝わりづらいので、文書か直接訪問による説明が好ましいです。
周囲への周知が終わったら、インターバル時間を確保しやすい環境づくりに努めましょう。
上長は部下の勤務状況を把握し、コミュニケーションを取りながら業務量などの調整を行ってください。
従業員も、より良い働き方ができるように意識して行動する必要があります。
管理側も従業員も「働き方を良くしたい!」と思って行動していくことで、インターバル制度以外の働き方改革も導入できるようになるでしょう。
制度導入から一定期間経過したら、インターバル時間の確保はしっかりできているか、労働時間の管理は行えているか、導入目的を果たせているかなど現状把握を行いましょう。
隠れた課題も洗い出すために、対象従業員にアンケートやヒアリングを行い、利用者のリアルな声を聞くのがおすすめです。
現状把握で明らかになった課題を参考に、制度内容の見直しを行います。
改善案を実践して終わりではなく、何度も状況把握・課題抽出・改善を繰り返しながら制度の質を上げていきましょう。
今回は、勤務間インターバル制度という従業員と企業にとって大きなメリットのある制度についてお話ししました。
働き方改革は推進されていますが、勤務間インターバル制度の導入率からも分かるように実践している企業は、中小企業では特に少ないです。
勤務間インターバル制度を導入するだけでも企業のアピールポイントになり、求職者にとって魅力的に映るでしょう。
この機会にぜひ勤務間インターバル制度の導入を検討してみてください♪
最近注目されている企業の取り組みとして「リスキリング」があります。
企業の利益向上にも従業員のモチベーションアップにも繋がる取り組みなので、ぜひ確認してみてください。