今まで、アルコールチェックの点呼は対面が原則化されていました。
しかし、働き方の幅が広がったりITが進化したことで、点呼の方法も変わってきています。
遠隔点呼は、対面での点呼が難しい場合にも正確性をもって行うことができるものです。
ここで詳しく知っていきましょう。
遠隔点呼とは
遠隔点呼とは、運転者と安全運転管理者が離れた場所にいても、アルコールチェックの点呼を行うことを言います。
バス・タクシー・トラックなどの自動車運送事業者において、使用する機器やシステムの要件を満たしていれば、遠隔点呼が可能となります。
今までも、カメラやモニターを用いた「IT点呼」と呼ばれるものは実施が可能でしたが、それが実施できるのは輸送の安全及び旅客の利便の確保に積極的に取り組んでいるgマークに認定されている事業者のみでした。
遠隔点呼では、そのような限定条件が取り払われています。
可能な範囲
- ・営業所内
- ・営業所等間
- ・gマーク認定があってもなくても実施可能
尚、今まで実施していた「IT点呼(トラック)」および「旅客IT点呼」も引き続き利用することができます。
遠隔点呼の要件について
遠隔点呼を行うためには、
- 使用する機器・システム
- 実施する場所
- 運用上の遵守事項
この3点それぞれで守るべき要件があります。
詳しく見ていきましょう。
【基本条件】
カメラ・モニター等を通じて運行管理者が運転者の表情・全身・酒気帯びの有無・疾病・疲労・睡眠不足などの体調を随時はっきり確認できること
アルコール検知器の測定結果を自動的に記録および保存するとともに、運転管理者等がこの時の計測結果をいつでも確認できること
使用する機器・システム
- ・推奨カメラは、画素数200万画素以上、フレームレート30fps以上
- ・推奨モニターは、サイズが16インチ以上、解像度が1920×1080px以上
- ・なりすまし防止のため、目の虹彩を使った認証や生体認証ができるものを導入する
- ・認証情報はデータベースや共有フォルダに保存でき、運転管理者がいつでも確認できる
- ・運転者の疾病・疲労・睡眠不足等の平常時との比較ができる機能ある
- ・点呼結果および機器が故障した場合の内容がデータで記録されること
実施する場所
- ・運転者の体調がカメラ越しでもしっかり分かるように、遠隔点呼時の照度の確保。
- 20Wの蛍光灯の直下50cmの照度が望ましい
- ・運転者の全身とアルコール検知器の使用状況を確認するため、天井に監視カメラを設置
- ・通信、通話環境の確保
運用上の遵守事項
【運転管理者】
- ・事前に地理や交通情報などの把握をする
- ・運行中の車両の位置把握(GPSなどを設置する)
- ・面識のない運転者とは、事前に健康状態や遠隔点呼の必要事項の確認を対面またはオンラインで行う
- ・運転者が持っていっている持ち物の保持・返却状況の確認
【非常時】
- ・運転者が酒気帯びなどにより運転できないと判断されたら、すぐに運転者の営業所の運行管理者に連絡。
- 運転代行者を手配できる体制を整備する
- ・機器の故障で遠隔点呼ができない場合、対面か営業所で実施が認められている方法で点呼を行う
【情報共有】
- ・グループ企業間で遠隔点呼を行う場合、必要に応じて遠隔点呼に必要な情報の取り扱いに関する契約を結ぶ
- ・運行管理者、運転者の認証で生体認証などの個人情報を扱う場合、事業者と対象者間で同意を得る
- ・遠隔点呼の運用に関する重要事項は、予め運行規程に明記するとともに、運行管理者・運転者に伝える
なぜ遠隔点呼が可能になったの?
遠隔点呼が可能になった背景は、要件を満たせばどの事業所も導入できる遠隔点呼を広めることで、運行管理が効率化し、運転者および運行管理者の働き方を改善することに繋がることが期待されています。
また、深夜運転や直行直帰でのアルコールチェックはずさんになりやすく、なりすましが発生する可能性が高まります。
遠隔点呼を行えるようにすることで、そのような特殊な状況での点呼の抜け穴を塞ぐことにも繋がります。
IT点呼との違い
IT点呼という言葉を出しましたが、遠隔点呼との違いはなんなのでしょうか。
IT点呼は、原則gマーク認定事業所のみが利用することができます。
しかし、gマーク認定事業所でなくても下記の条件を満たしていれば、IT点呼を行うことができます。
- 開設してから3年が経過している
- 過去3年間、第一当事者として自動車事故報告規則第2条に規定する事故を発生させていない
- 過去3年間、点呼の違反に係る行政処分または警告を受けていない
- 地方貨物自動車運送適正化事業実施機関が行った間近の巡回指導において、総合評価が規定以上である
このように、IT点呼は利用する事業所が限定されているのです。
一方、遠隔点呼は利用する事業所に制限はありませんが、使用機器や環境、遵守事項の要件がIT点呼よりもかなり細かいです。
遠隔点呼はなりすましが起こりやすく対面より点呼がしっかりやりにくくなるため、かなりの制約をしなければ厳しいことが伺えます。
そう考えると、IT点呼も遠隔点呼もまだまだ浸透させるのは難しいのかもしれません。
制度開始は2022年4月から!
遠隔点呼制度は、2022円年4月1日から申請を開始し、2022年7月から開始予定のようです。
まだ予定なので、もしかしたらもっと先になる可能性もあります。 こまめに確認してください。
ただし、開始後すぐに導入できるようになるわけではありません。
遠隔点呼を実施するには開始予定月に応じた提出期限までに、申請書と添付書類を提出する必要があります!
【遠隔点呼実施の申請をする場合】
提出先は、遠隔点呼実施営業所等・被遠隔点呼実施営業所等を管轄する運輸支局長・運輸管理部長または陸軍事務所長のところです。
遠隔点呼開始予定月 | 申請書提出期限 |
令和4年7月~令和4年9月 | 令和4年5月31日 |
令和4年10月~令和4年12月 | 令和4年8月31日 |
令和5年1月~令和5年3月 | 令和4年11月30日 |
開始予定月に合わせて2~4か月前に申請する必要があります。
提出書類
- ・遠隔点呼の実施に係る申請書
- ・遠隔点呼の実施に係る適合確認・宣契書
【申請内容を変更する場合】
申請内容を変更する場合も、変更予定月に応じた提出期限までに管轄運輸支局長等に変更申請書と添付書類を提出する必要があります。
尚、変更内容の重要度が低い場合は、変更後速やかに届出書を管轄運輸支局長等に提出すればOKです。
遠隔点呼変更予定月 | 変更申請書提出期限 |
令和4年10月~令和4年12月 | 令和4年8月31日 |
令和5年1月~令和5年3月 | 令和4年11月30日 |
提出書類
- ・遠隔点呼の変更に係る申請書
- ・遠隔点呼の変更に係る適合確認・宣契書
- ・遠隔点呼の変更に係る届出書(変更内容の重要度が低い場合のみ)
【遠隔点呼の終了】
遠隔点呼を終了する場合も、あらかじめ管轄運輸支局長等に遠隔点呼の終了に関する届出書を提出する必要があります。
提出書類
- ・遠隔点呼の終了に係る届出書
申請書は、「遠隔点呼 申請書」とネットで検索すれば1番最初にヒットします!
ページをクリックすれば自動的に申請書がダウンロードされるので、ファイルを開いて必要事項を記入してくださいね♪
アルコールチェックは白ナンバーも義務化
ご存知かもしれませんが、同じく2022年4月から白ナンバーのアルコールチェックも義務化されます。
きっかけは、千葉で起きた児童5人を死傷させた事件です。
もうあのような悲惨な事故が起きないことを願います。
酒気帯びの基準、アルコールチェック方法を今しがたここで確認していってください!!
まとめ
今回は、新しく制度化される遠隔点呼についてお話ししました。
今回の内容を簡単にまとめると…
- 遠隔点呼は、輸送の安全性に関する認定がなくても導入可能
- IT点呼との違いは、対象事業所が限定されているか否か
- 遠隔点呼の申請は4月から。申請書の提出が必要
このような内容になっています。
遠隔点呼を実施するのは要件として難しい部分はありますが、運転者および運行管理者の負担を減らすためにも導入が進んでいったらいいなと思います。
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