マネジメント現場で多く使われていた「PDCA」ですが、最近は別のものに代わってきているようです。
どうしてPDCAサイクルはもう古いと言われるようになってしまったのでしょうか。
また、新たなマネジメント手法はどんなものなのでしょうか。
早速見ていきましょう。
PDCAサイクルが古いと言われる理由
PDCAサイクルは、1950年代に米国の統計学者であるウィリアム・エドワーズ・デミング博士によって提唱された考えで、現在では品質管理の国際基準であるISO9001/ISO14001にもPDCAが取り入れられるなど、業務改善の効果的な手法として注目されていました。
そんなPDCAサイクルが、古いと言われるようになってしまったのはなぜなのか、理由を見ていきましょう。
回すのに時間がかかりすぎる
PDCAサイクルでは、「Plan(計画)」の部分に時間をかけすぎることで改善までたどり着くのに時間がかかりすぎてしまいます。
IT技術の発展に伴い、スピード感を持って効率的に業務をこなしていかないと、競合他社に遅れをとってしまう時代になりました。
ニーズや価値観が目まぐるしく変化していく現代において、計画に時間をかけてしまうと実行しようとした時には既に流行が変わっている、なんてことも起こってしまうのです。
また、IT技術の発展によって世の中がVUCA(不安定・不確実・複雑・曖昧)の状態になっていると言われています。
このような状況の中で、まず計画を立てる必要のあるPDCAサイクルは計画の段階から進めなくなる可能性が高く、時間やコストがかかると言われるようになってしまいました。
新しい発想がうまれにくい
PDCAサイクルは業務改善を目的としているため、既にあるものを改善するのには役立ちますが、新しいアイデアを生み出しにくいです。
ニーズが多様化している現代では、今までにない新しいアイデアを生み出していく必要があるため、PDCAサイクルはそういった現在の風潮にそぐわないのです。
そもそもPDCAとは?その意味をおさらい
ここで、PDCAの意味をおさらいしましょう。
「PDCAサイクル」という言葉を聞いたり利用したことは一度はあると思いますが、頭文字の一つ一つの意味をここでしっかり理解していきましょう。
Plan:計画
目標を設定し、それを達成するための計画を練る。
【ポイント】
- 「受注率〇%達成を目指す」などの具体的な数値を出す
- 6W2H(誰が・いつ・どこで・だれに・なにを・なぜ・どのように・いくらで)の要素を意識する
Do:実行
計画に基づいて行動を起こす。
【ポイント】
- 時間を測る
- 目標に対する進捗や数値を記録する
- 実行して発生した課題も記録する
Check:評価
計画通りに進んでいるか、目標に対する進捗度を評価する。
【ポイント】
- 計画通りに進んでいなかったら、失敗要因を分析する
- 計画通りに進んでいたら、成功要因を分析する
- 具体的な数値を用いて定量的に測定する
Action:改善
評価段階で明らかになった分析結果を見て、今後どのような行動・対策が必要になるかを考える。
【ポイント】
- 継続して行うもの、改善したり中止するものを判断する
- 最も実現性の高いものを選択する
- 選択肢を多く持つようにする
PDCAの正しい回し方
PDCAは導入している企業も多いと思いますが、うまく回せているのか心配ですよね。
どのようなところに注意すれば、PDCAサイクルを効果的にまわすことができるのでしょうか。
4つの段階をしっかり通る
PDCAサイクルが上手くいかないのは、
Plan(計画)→Do(実行)までで行動が終わっており、行動結果の分析や改善を行っていない
行動分析まで行っても、そこからの改善に繋げられない
などの理由が挙げられます。
計画→実行→スケジュール分析→改善点の洗い出しと排除
この4ステップを全て行わなければ、PDCAを使っている意味がありません。
らせん状に回すこと
PDCAは4ステップを回していくのが重要ですが、ただ回すのではなくらせん状に内容がステップアップしていくように回しましょう。
課題が改善されていれば、次のステップではもっと赤い目標を掲げて行動していけるはずです。
Action(改善)の段階で計画自体が1ランク上に上がるようにどんどん内容を磨いていきましょう。
目標設定は明確に
「認知度を増やす」「来店数を上げる」などの抽象的な目標設定は計画内容を練りにくく、実行までに時間がかかってしまいます。
地に足がついた行動計画を作成するには、「売り上げを今より20%伸ばす」など、具体的な数値を出しましょう。
そうすることでゴールが明確になり、従業員のモチベーションを上げることにも繋がります。
小さい規模で回す
PDCAサイクルを回す際は、業務をなるべく細かく分類し、一つ一つ丁寧に回していきましょう。
大規模でPDCAを回そうとすると、目標が大きすぎていつまでたっても達成できずにCheck(評価)・Action(改善)の部分ができなくなってしまいます。
小さい規模でPDCAを回すことで一気に改善していくことができ、効率がいいです。
ここまで、PDCAについてお話してきましたが、PDCAに代わる手法はどのようなものがあるのでしょうか。
今はいくつも出てきているので、ぜひ参考にしてください。
PDCAに代わるものとは?今ある4つの手法
PDCAに代わる新たな業務改善手法は
- OODA
- STPD
- DCAP
- PDR
の4つです。それぞれ詳しく見ていきましょう!
OODAとは
OODAとは、Observe(観察)・Orient(状況判断/方針決定)・Decide(意思決定)・Action(行動/改善)の頭文字をとったもので、「OODA(ウーダ)ループ」と言われており、問題解決のメソッドことをいいます。
もともとは、空の上で戦うパイロットのために編み出された戦術で、計画を立てるのではなく現状を分析してから意思決定・行動に移すので、現代のような目まぐるしく状況が変化していく場合に向いているフレームワークになります。
PDCAとのちがい
PDCAは、「計画を立ててから丁寧に実行から改善までを行う」のに対し、OODAは、「現状を把握したら、とりあえず行動に移す」という特徴があります。
OODAの方がスピーディに実行することができ、Orient(状況判断/方針決定)の段階では方向性をいくらでも変えることができるのです。
OODAの運用方法
OODAというメソッドの内容を詳しく解説します。
Observe(観察)
自ら立案した計画に固執せず、相手をじっくり観察し、理解することを示します。
既存の市場や競合を知ることで、今何が求められているかを考えるのです。
Observe(観察)の段階においては、柔軟性や臨機応変さが求められます。
Orient(状況判断/方針決定)
観察結果から得られた情報を分析して今の状況を判断し、方向性を決めます。
対応のスピードが早ければ早いほど、意思決定の速度も早まります。
仮説としての方向付けを行う段階ですが、4つの中で最も重要な部分です。
Decide(意思決定)
よく観察し、今の状況を鑑みて方向付けを行った後、どう行動するかの具体的な実行計画を決定します。
- 自分/組織がどの方向に行きたいのかの最終確認
- もっとも効果的と思われる方法はどれかを選択する
この2つのプロセスを踏み、実行に移します。
Action(行動/改善)
Decide(意思決定)で決定された実行計画に基づいて行動を起こします。
一度決めた意思決定に固執する必要はありません。
もし状況が変化したり、あまり成功が見込めない場合は、またObserve(観察)の段階に戻ってOODAループを繰り返しましょう。
OODAのメリット・デメリット
では、OODAのメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
スピーディに実行できる
OODAの一番のメリットはこれです。
現状判断を行ったらすぐに行動を起こせるため、スピード感を持ってサイクルを回すことができます。
一度きりの実行ではなく、すばやく何度もループさせながら調整していくので、早い段階で目標を達成することができます。
状況の変化に対応しやすい
PDCAのように計画を立ててから実行に移すわけではなく、現状に合わせて方針を判断していくスタイルなので、状況が変わったとしてもすぐに対応することができます。
ニーズに合ったサービスを提供できる
今の状況を観察してから方向性を決めるため、顧客のニーズに合ったサービスを提供しやすくなります。
特に現代はニーズが変化しやすいので、OODAループを使ってそのニーズの変化に逐一対応していくことで、顧客満足度を上げることができます。
デメリット
<h45style=”text-align: left;”>情報収集が手薄になる
OODAはスピード感が求められるため、情報収集が十分にできなかったり、意思決定の判断が鈍くなりやすいです。
どんな情報がどれくらい必要なのか最初に把握して、判断に関しては1人で決めるのではなくなるべく周りの人と話し合うようにしましょう。
組織の統制が取りにくい
OODAループでは、個人が自由に考えて動くことを促しているため、組織としての統制がとりにくくなり、組織内の目標がバラバラになる恐れがあります。
それを防ぐためには、従業員が同じ方向を目指せるように目的や方針の共有を行いましょう。
孤立する可能性
OODAループは自己決定権があるところが良い点ですが、あまりに一人で抱え込んでしまうと、その分責任も大きくなって孤立してしまう恐れがあります。
OODAを行う場合は、1人ばかりが責任を背負わないように、上司がサポートしてあげてください。
STPDとは
STPDサイクルは、「See(見る)」「Think(考える)」「Plan(計画する)」「Do(実行する)」の頭文字を取ったものです。
事実(現状)を見てどうすべきか考え分析し、そこから計画・実行に移っていくという””現状を認識することから始まるマネジメント手法”になります。
STPDの運用方法
第1段階:See(見る)
まずは現状を正しく把握するところから始めます。
市場調査などを行い、市場がどのようになっているか、商品・サービスに対する顧客/消費者の意見など、ヒアリングを行います。
先入観を捨て、客観的なデータを集めることが重要です。
第2段階:Think(考える)
第1段階で集めた情報を元に、「現状に合わせてどう変えていかなければいけないか」を考えます。
集めたデータから課題が見えてくるので、その課題を解決するにはどこを改善すべきか時間をかけて考えます。
情報が足りない場合は、Seeに戻ってみましょう。
第3段階:Plan(計画する)
第2段階のThinkで得られた解決策を計画に落とし込みます。
目標を数値で表すとゴールが明確化して進みやすくなります。
ここでは5W1H(いつ・どこで・だれが・何を・なぜ・どのように)を使って計画を立てるのがおすすめです。
第4段階:Do(実行する)
計画に沿って実行します。
そのため、何か新しい取り組みを始める時や安全管理の時に役立つ手法となっているのです。
STPDのメリット・デメリット
そんなSTPDのメリットとデメリットを見ていこうと思います。
メリット
リスク回避ができる
STPDサイクルでは、現状把握や課題改善に時間をかけるため、今まであった顧客にとっての不満や市場の状況を最初に知ることができます。
そのため、過去に起こった問題を回避しながら計画を立てて実行することができるのです。
リスク回避がしやすいため、その分計画を練り直す時間が短縮されます。
臨機応変に対応できる
STPDサイクルでは現状や事実を先入観なく受け入れるため、想定外の結果がでても「なぜそうなったのか」を情報収集・分析してすぐ改善に繋げる対応ができます。
過去の経験や推測が介入しないため、Plan(計画)でかかる時間が少なく、スムーズに実行することができます。
サイクルを素早く回せる
サイクルを素早く回すことができるのもSTPDの特徴です。
DoとSeeの部分を同時に行えるため、1サイクルにかかる時間が短いのです。
そのため、サイクルを素早くまわることができます。
デメリット
評価段階がない
STPDサイクルでは、Check(評価)段階がありません。
計画前に時間をかけるため、Thinkで考えた改善策が必ず結果を出すと考えてしまっている点が落とし穴です。
実行と現状把握を細かく行い、計画の改善に繋げていくのも1つの手です。
計画までに時間がかかる
STPDは現状把握と課題解決策の発案に時間をかける手法です。
そのため、計画までに余裕がない場合は向いていません。
「まずは実行してそれから改善していく」という場合は、PDCAサイクルの方が向いています。
DCAPとは
DCAPはDo(実行)・Check(評価)・Action(改善)・Plan(計画)と、内容はPDCAと変わりません。
しかし、その順番の違いが重要になってきます。
まず、行動をしながらトライアンドエラーを繰り返し、最終的に計画を立てることが効果的という考え方です。
「習うより慣れろ」の方針で、まずは実行することで現状やニーズを判断し、そこからより良い行動を行うために改善・計画を練るのです。
PDCA,OODAとの違い
PDCAとの違いは、計画ではなく行動を先に行うところにあります。
DCAPもOODAと同様すばやく実行に移せるので、現在の社会の動きに向いています。
OODAとの違いは、やはり最初に行動を起こす点にあります。
スピード感があるのは同じですが、DCAPの場合実行前の観察や状況判断、計画立案がありません。
そう考えると、DCAPはOODAよりもさらにスピーディに実行できると思われます。
DCAPのメリット・デメリット
では、そんなDCAPのメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
すばやく実行に移せる
前述したように、DCAPのメリットは実行に移すことから始める点にあります。
他の手法のように計画や意思決定に時間をかける必要がなく、変化が激しい現代社会に向いています。
ニーズに合わせて計画を立てやすい
実行に移してから分析・改善を行うため、市場のニーズや競合の動きを把握してから計画を立てることができます。
実際の市場やニーズの動きに触れることで、今後どうなっていくかも予想しやすいので、立てる計画も成功に繋がりやすくなります。
失敗してもすぐに次に移れる
DCAPでは、綿密に計画を立てて実行している訳ではないので、失敗のリスクが低いです。
そのため、万が一失敗してしまってもなぜ失敗したのかを分析し改善点を見つけ、次の行動に移すことができます。
デメリット
一回のサイクルで得られるリターンが少ない
失敗した際のリスクが少ない分、何度もトライアンドエラーを繰り返さなければそれなりの成果は見込めません。
サイクルを回す速さもしっかり考えましょう。
大規模なプロジェクトには向いていない
途中で予定変更をするとなると大幅なコストがかかるような大規模なプロジェクトにはDCPAは向いていません。
そのようなものは、まず実行するにはリスクが大きすぎるので、PDCAサイクルを使って綿密な計画を立て、実行に移す方が向いています。
目的・目標があいまいになりやすい
計画を立てずに行動するため、進むべき方向が分からないままになりやすいので注意が必要です。
目的・目標を明確に立てる必要はありませんが、「売上を伸ばしたい」「企業の知名度を上げたい」などの目的は持ってから始めた方がいいと思います。
個人の場合は、「お金を稼ぎたい」「知見を広げたい」などでしょうか。
どんな目的でその行動をするのか、一度考えてみてください。
一度サイクルを回して、計画の段階で明確な目的・目標を決めていけばいいと思います。
PDRとは
PDRはハーバードビジネススクールのリンダ・ヒル氏が提唱した新しい手法です。
PはPreparation(準備)、DはDo(実行)、RはReveiw(評価)をそれぞれ意味します。
これからすることを考え目標を立てるなど準備を行い、実行してそれを再検討・復習するという流れです。
このサイクルを短いスパンで回していけるため、スピード感を持って取り組めます。
PDCAとの違い
PDCAではまず計画を立ててから実行に移しますが、PDRでは計画の準備から始まります。
計画を立てる時間を削って実行のための準備から取り掛かるという点で、PDCAとは異なることが分かります。
また、PDCAの「check」とPDRの「Reveiw」も意味が少し異なります。
checkでは「確認する」という意味で、実行したことは間違っていないか、改善場所はないかを探します。
一方、Reveiwは「批評」という意味もあり、第三者に客観的に評価してもらうという意味もあります。
第三者の目線があるかどうかという点でPDCAとPDRには違いがあるのです。
OODAとの違い
OODAもPDRも、短いスパンでサイクルを回すことができるという点では同じです。
しかし、OODAは行動する前に様々な分析を行い、改善よりも行動する前の下準備に時間をかけています。
一方、PDRはまず準備を行い実行に移すため、”まずはやってみて、そこから改善してよりよくしていくという考え方が根底にあることが分かります。
このように、重点を置いている場所が違うのです。
PDRのメリット・デメリット
PDRにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
メリット
すばやく回していける
やはり一番のメリットは、短いスパンでサイクルを回していける点だと思います。
行動までに時間をかけませんが、その分改善に力をいれることができます。
小さなトラブルに対応できる
サイクルを細かく回していく手法のため、小さなトラブルでも発見して修正することができます。
デメリット
準備に時間をさけない
PDRでは、準備から入るため現状の分析や計画をたてません。
そのため、最初の行動ではミスやトラブルが発生しやすいという点が挙げられます。
臨機応変に対応していく必要がある
入念な準備をしない分想定外のトラブルが起きやすいため、それらに対応できるように構えておく必要があります。
すぐに改善対応ができるように情報共有も重要です。
これらの手法を上手く使って生産性を挙げよう!
いかがだったでしょうか。
PDCA以外の手法を知ることで、スピード感を持って業務改善・市場の開拓を行えると思います。
ただし、どれかひとつの手法を選ぶ必要はありません。
今回紹介したどのサイクルにもそれぞれの良さがあるので、ゆっくり時間をかけられる時はPDCAを使う、素早い判断や改善が必要な時はOODAやDCAP・STPDを使うというように、状況に合わせて使う手法を選んでいってくださいね♪
尚、PDCA・OODAなどの各手法を行う際は、顧客管理システムのCRMを使うことでもっと効率的に判断・改善ができます!
オフィ助では、有名なCRMである「salesforce(セールスフォース)」と「kintone(キントーン)」の導入支援を行っています♪
CRMについては、コチラの記事で詳しく説明しているので一緒にご覧ください。
記事内ではセールスフォースとキントーンも紹介しています!
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