近年、世の中では“サステナビリティ”や“SDGs”というキーワードをよく目にします。
その中で、新たに「SX」という言葉が生まれました。
SXとは何なのか、注目される理由やDX・SDGsなどとの違いを紹介していこうと思います。
SXとは
SXとは「サステナビリティトランスフォーメーション」の頭文字をとったもので、企業のサステナビリティと社会のサステナビリティの両立をめざすために、投資家などとの話し合いを通じて経営や事業の変革を実現することを指します。
企業のサステナビリティとは、持続的に稼ぐ力を高め、社会の持続可能性に役立つ長期的な価値を提供することです。
社会のサステナビリティとは、感染症や気候変動など、社会の不確実性に備えてリスクと機会を把握し、将来的な社会の姿を構築することです。
社会の不確実性が高まる中で企業のサステナビリティを高めていくには、どちらにも貢献できる経営を行っていく必要があるのです。
また、トランスフォーメーションがXであらわされるのは、「Trans:横断する・超える・変換する」と「Cross:交差する・横断する・十字」の意味が似ているため、十字を表す「X」に略されるからです。
DXとの違い
DXは「デジタル・トランスフォーメーション」の頭文字をとったもので、デジタル技術を利用して企業の競争性を高めることを指します。
SXと言葉は似ていますが、その内容は異なります。
ただし、SXを進めていく中でDXへの取り組みが必須になるので、密接な関係があることを把握しておきましょう。
建設業のDXについては、次の記事で説明しているので一緒にご覧ください。
GXとの違い
GXとは「グリーントランスフォーメーション」の頭文字をとったもので、化石燃料を太陽光発電などのクリーンエネルギーに変換し、脱炭素社会を目指した経済社会システム全体を変革しようとする取り組みのことです。
SXは持続可能性に、GXはエネルギー変換に焦点を当てている点が異なります。
しかし、持続可能性な社会を実現するには再生可能エネルギーの利用が必要不可欠なので、GXはSXの中に含まれます。
こちらも密接な関連があるのです。
SDGsとの違い
SDGsは、持続可能な世界を実現するための17個の開発目標のことを言います。
SXは持続可能な社会の実現に向けた企業の取り組みであり、SDGsは世界の取り組みなので、その規模が違います。
しかし、SXに取り組んでいくことでSDGsの達成にもつながっていくと考えられます。
それぞれ意味は異なるけど、SXとの関係性は深いことがわかるね。
SXをもっと深く理解して実現していくためには、DX・GX・SDGsへの理解も深めていくことが重要ってことだ!
SXが注目される理由
SXが注目される理由は、主に3つあります。
- 現代社会の不確実性
- 投資家からの信頼
- 企業イメージの向上
それぞれ見ていきましょう。
現代社会の不確実性
現代社会は、地球温暖化や気候変動などの異常気象、感染症の蔓延、価値観の変動、急激な技術の進化など、さまざまな不確実要素が発生し、従来の社会環境とは大きく異なってきています。
企業は、そんな不確実性の高い社会で生き残っていかなければいけません。
そのために、企業の持続可能性だけでなく社会の持続可能性も高めていく必要があり、SXに取り組む企業が増えているのです。
投資家からの信頼
SDGsの重要性が浸透してから、投資家の間では「ESG投資」というものが新トレンドとなっています。
ESG投資とは、「環境・社会・ガバナンス」の観点から投資先を選ぶ方法で、従来の財務情報を見て投資先を決める方法とは大きく異なります。
「企業の将来を予測するためには社会への貢献度、中長期的な企業価値が重要だ」と考える人が増えたことで、ESG投資が注目されるようになったのです。
これにより、投資家から支持されるためには社会貢献が重要な要素となり、投資家へのアピールとしてSXに取り組む企業が増えたのです。
企業イメージの向上
SXに取り組むことで、社会の持続可能性や脱炭素社会への貢献をアピールできるので、企業のイメージを向上できます。
地球温暖化などが深刻化している現代では、環境への取り組みを重要視する人が増えています。
それは投資家だけでなく、求職者も同じです。
企業の環境への取り組みを重視して就職活動を行う人材も増えてきているので、SXへの取り組みをアピールすることで優秀な人材を取得できます。
SXを実現するために取り組むべきこと
SXに取り組んでいきたいと考えた時、まず何からすればいいのか分からないと始められませんよね。
ここでは、SXを推進するために取り組むべきことを紹介していきます。
企業のめざす姿を明確化する
2022年に公開された、SX実現のための報告書「伊東レポート3.0」によると、社会のサステナビリティを踏まえつつ、企業が長期的にめざす姿を明確化することが重要なようです。
自社が社会に対して持続的に提供できる価値は何かを知るために、まずは自社が大切にしている価値観を明確にしましょう。
その価値観に基づき、取り組んでいる事業を通して解決するべき重要課題を見定めていく必要があります。
自社の価値観と重要課題、双方に矛盾がない形で、どのように社会に価値を提供していくか、そこからどのように長期的な価値向上を達成するか、というめざす姿を設定していくことが重要です。
企業の稼ぐ力を持続化・強化する
企業の経営や事業内容に持続可能性がなければ、SXを実現することは不可能です。
稼ぐ力がなければ投資ができず、事業にお金をかけられなくなるので衰退してしまう可能性が高いです。
- ビジネスモデルを見直して無駄を省く
- 自社の強みを明確化する
- 事業内容の競争優位性を高める
- マネジメントの見直し
上記のような取り組みを行い、企業の価値向上と安定性を高めていく必要があります。
社会のサステナビリティを経営に反映させる
社会の状況を把握するだけでなく、それを経営に取り込んでいく必要があります。
感染症や気候変動など、社会の不確実性は高まり続けています。
そのような世の中で生き残っていくためには、現在の社会情勢を把握しながら将来像を予測し、必要な取り組みを検討していくことが重要です。
そのような不確実な世の中は、リスクがあるとともにビジネスチャンスも転がっています。
それを見逃さないよう、常に社会の状況にアンテナを張っておきましょう。
投資家との対話を繰り返し行う
SXの取り組みは中長期的なものであり、すぐに利益を得ることはできません。
そのため、短期的な利益を求める投資家から理解を得るのが難しい可能性があります。
投資家との対話を繰り返すことで、SXの重要性、将来的に利益につながることを理解してもらい、投資家からの信頼を得るようにしましょう。
SXの推進には「ダイナミック・ケイパビリティ」が必要
SXを推進していくためには、ダイナミック・ケイパビリティが必要になります。
ダイナミック・ケイパビリティとは、環境の変化に対応するために企業が自己変革する能力のことを指します。
一言でいうと、「企業対応力」「企業変革力」です。
ダイナミック・ケイパビリティは、3つの要素で構成されています。
感知(センシング)
企業を取り巻く環境の変化・脅威・危機を感知する能力。
顧客ニーズや競合他社の動向、社会情勢などを正しく認識し、企業が生き残るにはどう変革していけばいいかを感知する必要があります。
捕捉(シージング)
既存の資産・技術・知識を、必要なタイミングで再構成・再配分する能力。
企業内部で再構成する動きは、他社が真似しにくいため競争力を高めることができます。
変容(トランスフォーミング)
経営資源を再構築・変容させる能力。
企業を取り巻く環境の変化に対し、組織体制の再構築・社内ルールの変更・人事制度の見直しなどを行うことで、持続的な競争優位性を確立できます。
ダイナミック・ケイパビリティは、SXを推進する上で必要なもの。
SXと並行して、ダイナミック・ケイパビリティにも取り組むのようにしよう♪
日本国内のSXに対する取り組み事例
ここでは、日本でのSXの取り組みを紹介していきたいと思います。
大成建設株式会社
大成建設株式会社は、SDGsやESGといったサステナビリティの重要性を認識し、サステナビリティ経営とSDGsへの取り組みを強化するために「サステナビリティ総本部」を立ち上げました。
本業である建築部門や営業活動に並ぶ総本部として立ち上げられているため、大成建設の中でSXへの取り組みが重要な立ち位置にいることが分かります。
大成建設は、自社活動の環境対策や二酸化炭素削減への経営戦略一元化など、環境に関する活動を推進していくようです。
スターバックスコーヒー
スターバックスでは、主に資源や環境面でのSXを進めています。
マイタンブラーまたは店内のカップを利用して注文することで、資源節約に協力したお礼として21~22円割引になります。
タンブラーの利用数に応じてプレゼントされる特典もあり、30万杯を達成したら55円までのカスタマイズが無料になります。
また、路面の直営店訳350店舗で、使用する電力を100%再生可能エネルギーに切り替えました。
これにより、環境負荷の低減につながっています。
大林組
大林組は、サステナビリティの実現のために「サステナビリティ委員会」を設置しています。
サステナビリティ実現に向けた具体的な課題の分析、具体的なアクションプランとKPIを定めているようです。
- 省エネのさらなる推進
- グリーンエネルギーの利活用
- ダイバーシティ&インクルージョン(個々の違いを受け入れ認め合い生かしていくこと)
- 革新的な技術開発
上記のようなことを推進していき、企業と環境のサステナビリティに貢献しています。
ネスレ
ネスレでは、「食の持つ力で人々の生活を豊かにすること」を信条に、人々と地球の健康な未来を創造することをサスティナビリティの方針としています。
その取り組みとして、一時サプライチェーンによる森林破壊ゼロや自社製品のプラスチック使用率削減といった取り組みを行っています。
大ヒット商品の「キットカット」では、大袋の個包装を紙パッケージ化することでプラスチック使用率の削減を実現しています。
この取り組みは、『第44回木下賞 包装技術賞』を受賞しています。
まとめ
SXへの取り組みは、企業の長期的な成長や利益を考えた時に必要不可欠なものです。
ここでSXについて正しく理解すれば、企業の安定経営に役立つはずです。
今後も持続可能性についての取り組みが重要になってくるので、他社の事例を参考に、SXの取り組みを積極的に進めていきましょう!
コメント